移植病棟24時 赤ちゃんを救え!~を読んで
マイアミ大学移植外科の加藤友朗先生の著書である『移植病棟24時 赤ちゃんを救え!』を読みました。
そこには、移植の可能性の高さと、日本では救えなかった命が、海外での移植によって救えた事例がいくつか紹介されています。
著者の加藤先生は、あまり日本での移植の関する考え方には大きく触れず、日本では余命を宣告された赤ちゃんをぎりぎりで救えた話など感動する事が多く記されています。
この本は、読者に視点により、様々な感想が抱けるのではないかと思うのです。
GVHDという移植後の難病の話が出てくるのですが、その中の加藤先生と家族との話は、歯科医師の私にとっても参考になる話でした。加藤先生は、家族との話し合いの中で、一番ベストな治療を家族と共に探っていっています。われわれが常に行っているインフォームドコンセントについての本当の回答を、加藤先生がこの本の中で語っていたように思います。
以下にすこしだけ抜粋します。
~患者の質問に悪いものはない~
アメリカで病院へいくと、必ず最後に「何か質問はありませんか」と医師から聞かれる。自分からは質問しない患者も、医師から聞かれると何かしらそこで質問をしてくるのである。
僕も必ず「何か質問はありませんか」と聞くようにしている。
僕は患者がする質問で悪いものは無いと思っている。確かに言葉や言い回しが稚拙な場合もある。しかし、患者が何か疑問に思っているときは、そこに重要なポイントが隠されていることがよくある。それを知るには極力自分の言葉でしゃべってもらうことが必要である。
治療に疑問があって、患者が治療に納得できていないというときもある。そういうときに患者の疑問に気がつかないで放置していると、医師と患者との信頼関係を損なうことになる。患者は自分で納得出来る医療を受けることが重要であり、そのためには患者の疑問を聞き出すことがとても大事である。
患者が自分の受けている治療を納得するようになるためには、患者と医師がお互いの意見を言い合って、その上でお互いに「これがいい」と了解できることが大切だ。
僕は、患者に質問をしてもらうこと、それが患者参加型医療の出発点だと思っている。日本の場合は、医師から質問がないか聞かれること自体少ないし、質問されていないのに聞くと「こちらにお任せください」と言われることが多いという。
「この本にこんなことが書いてあるんですけど」
こんな質問に対して医師はどのように対処するのであろうか。実際、日本でも治療法について患者がこのような質問をすることはあるはずである。そのときその治療法を医師が知らなかった場合、医師の側はなんとなく居心地が悪くなることが多いのではないだろうか。
また、その治療法が自分のやっている治療とは全然違うタイプの治療であった場合、「本に書いてあることは必ずしも正しくない」と言うかもしれない。
僕は、患者から聞かれたことについては、自分が知らないことであっても、患者が疑問を持っているなら医師は調べるべきだと思う。それを調べた上で医師自身が自分の選んだ治療法をなぜ薦めるのかを患者に説明するべきであろうと考えている。
「あのときあの治療にしてもらえばよかった」と患者が思っていると、患者参加型の医療の大きな障害になる。
患者が納得していないときには医師にもわかる。ただ納得していないことがわかっていても時間がないときは、それをあえて聞きだそうとするのはなかなか難しい。正直言うと僕も忙しいときにはついついそうしてしまうこともあるが、納得していない患者やその家族と話し合うことを怠ると、決してよい結果にはならない。
興味のある方は、是非ご一読をおすすめいたします。
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