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しろくま先生のブログ
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2008年9月17日 (水)

先生、あっというまでしたよ。

先週、ある患者さんを無事に終えることが出来ました。今後は定期的なメインテナンスを行う事になります。

その患者さんは、右下の奥歯の歯肉が大きく腫れ上がり、自発痛がひどい状態で来院されました。

問診、触診、視診、レントゲン撮影による確認、どれをみても、もう抜歯するしか手段がありませんでした。

抜歯というのは、歯医者にとってもとても苦しいものです。患者さんは、痛みを止めてもしいとい他に、この歯を救って欲しいという気持ちで来院されていると思うのです。

その当日は、腫れがひどすぎたため、腫れをなくす処置だけをして頂き、次の時に抜歯を行いました。

患者さんは抜歯に対して、ひどいショックを受けているようでした。

口の中というのは、咬合高径(こうごうこうけい)というものがあります。口を閉じたときに上の歯と下の歯が合わさった時の高さのことです。わかりやすくいえば、鼻の下から顎の先までの長さのことです。赤ちゃんはこの咬合高径が短いので、とても愛らしく、成長するにしたがって、この長さが変わり、大人らしく変化してくるのです。

この咬合高径は、口腔内の咬合力を受けて、どんどん変化します。下顎の歯は上へ上へと移動します。しかし、上顎の歯も下へ下へと移動するため、噛み合って口全体の変化は無いように見えます。しかし、歯周病などで、歯の歯根膜などが減少してくると、歯がぐらついて、咬合高径がどんどん変化していきます。

この患者さんも歯を抜いてしまったので、抜いた隙間に歯が倒れたり、歯が落ちてきたりして、口腔状況が変化する恐れがあったのです。そうすると、顎関節症になる確立が高くなるので、欠損部位には、何かしら歯の補填が必要なのです。

現在出来る歯の補填には3つあります。一つは入れ歯です。もう一つはブリッジです。最後はインプラントです。

この患者さんの場合、以前に脳梗塞を経験していたので、体の負担の少ない入れ歯をお勧めいたしました。しかし、患者さんの希望でどうしても固定制(入れ歯以外のもの)がよいとのことでした。

ブリッジとインプラントしか選択の余地がないのですが、患者さんはインプラントを選択されました。私は、現在のインプラント治療に関してはかなり古いタイプの歯科医師かもしれません。大学で受けたインプラント教育がかなり厳格だったため、その古い治療しか出来ないのです。その古い治療というのは、「インプラントは手術を伴うため、すこしでも疑いのある症状はすべて取り除いてから、インプラントを行う」というものです。

そのため、現在のように簡単にインプラントをするということは選択しません。口腔内のチェックから始まり、歯周病の治療、虫歯の治療、患者さんの自己管理の徹底などをすべてこなせてから、初めてインプラントを開始します。そのため、とても時間がかかります。しかし、この時間をかけておこなうというのは、とても大事だと大学の先輩に聞かされました。

というのは、「インプラントは治療をしたら、それで終了ではなく、その後の方がとても長く大事である。この長い治療に耐えられない患者さんは、インプラントを受ける資格はない。自分の体よりも大事なものを優先させる患者さんは、入れ歯で様子をみてもらったほうがいい」とのことでした。つまり、口腔内のすべてをチェックする時間もインプラント治療をする上では大事な試練だというのです。

その患者さんは良く私たち治療に付いてきてくれました。先日インプラントの治療が終了し、10年保証書を手渡しました。

「☆☆☆さん、よく頑張りましたね。一応、今日で治療は終了です。あとは定期的なメインテナンスになります。ご苦労様でした。」とねぎらいました。

患者さんは「先生、最初は長いと思ったけど、あっというまでしたよ。先生ありがとうございました。」

歯医者になってよかったと思うのはたぶんこんな時ではないでしょうか。

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