こんなに大切な噛み合わせ1
今回から、何回かに分けて宮田隆先生の著書「歯周病の本当に怖いわけ」よりお届けいたします。
歯周病はお口の中を清潔に保っていれば、進行を遅らせることができるのでしょうか?残念ながら答えは「ノー」です。
歯周病の進行は感染性の炎症と「力」による、と専門家は考えています。「力」とは、私たちが毎日物を食べる「噛む」という行為そのものです。
実は私たちが食事に費やす時間、つまり物を食べるために噛む時間というのは意外に短いのです。もちろん個人差もありますが、本気で噛んでいる時間はせいぜい数十分ではないでしょか。
「良く噛んで食べる」という本に面白い記述があります。学生達に弥生時代から平安、鎌倉、江戸の初期、後期、そして昭和10年代を経て現代までの7つの時代の代表的な食事を与えて、どのくらいの回数を噛み、そしてそれぞれの食事に費やした時間を調べてみたそうです。
その結果、弥生時代の食事は3990回で51分も時間を費やしたそうです。その後、噛む回数は減ってきていますが、それでも千回以上は噛み、食事に費やす時間も多少ばらつきがあるものの15分から30分くらいかけていたそうです。
ところが、現実は実に620回、わずか11分で終わってしまうのだそうです。それだけ、食べ物が軟らかくなった、ということなのでしょが、問題はカロリーです。現代は過去のおよそ倍のカロリーを摂っているのです。噛む回数も食事の時間も昔の半分くらいで摂取カロリーだけは倍。この本の著書、斉藤滋氏はそんな日本人の噛まなくなった傾向を警告しています。
噛み合わせと歯周病
逆に考えると、現代日本人は噛まなくなったのだから「力」の影響は少ないのでは、と考えるのが普通ですが、実はそうではありません。食事の時に噛むのは一日のうちそう長い時間ではありませんが、むしろ、睡眠中とか無意識で噛んでいる方がはるかに長いのです。
それが顎の関節や筋肉に異常が出る「病的」な状態になると「ブラキシズム」や「顎関節症」といった病名が付きますが、ほとんどの方はそんな障害を与えたことがあるのです。
歯と歯周病組織の事をもう一度おさらいしておきましょう。歯は骨の中に埋まっています。厳密にいうと、もともと骨の中にあった歯のオリジナルが成長するのに従って外に飛び出てきた、といったほうが正解でしょう。それ「萌出」といいます。そして、歯を外に押し出すネットの役目をしていたのが歯根膜と呼ばれる細い繊維です。
ある年齢に達すると歯はしかるべき所まで外に出ると萌出をやめます。ちょうどその場所が、前にお話しした歯冠と歯根を分けるセメント・エナメル鏡といわれる部分なのです。そして、歯を押し上げていたネットは、今度は歯を取り囲むように骨と歯を結んでしっかり繊維で固定します。ですから、歯は骨と直接くっついているのではなく、繊維を介在して安定を保っているのです。
明日はこの歯根膜の続きからです。
参考文献 歯周病の本当に怖いわけ 宮田隆著 医歯薬出版
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