口内炎はあぶない
本日は、名古屋大学医学部口腔外科学講座教授 上田実教授の著書「咀嚼健康法」よりお届けいたします。
口内炎はあぶない
口のなかにはさまざまな病気が出来ます。なかには癌のようなきわめて危険な疾患もあります。代表的な口腔癌の舌癌は、観察しやすい場所にできるにも関わらずなぜか発見が遅れることが多いのです。
我々の病院を訪れる患者さんで、大都市に住み、多くの医療機関に囲まれて暮らしているにもかかわらず、進行舌癌になってから来院する人は珍しくないのです。舌癌がなかなか発見されない理由は、患者本人に知識が不足していることもありますが、歯科医や医師が見過ごしたケースも少なくないのです。
患者さんが口の中の異常を医師に訴える時、ほとんどの人が「口内炎です」といいます。その結果、カルテ上でも口内炎という診断名になってしまいます。これは患者さんが内科に行って「風邪を引きました」と自己診断して風邪薬をもらってくるのと同じ事であります。口内炎という病名は、患者さんにとっても医師にとっても安心出来る病名なので無意識に受け入れられてしまうものかもしれません。
かくして、初期の舌癌は確定診断が得られないまま放置され、進行癌になるのです。
参考文献 咀嚼健康法~脳と体を守る~ 中公新書
病名はドクターが、決めるもの、
先生にしたがわなければなりません。