虫歯の進行具合と症状
本日は、青山健一先生の著書「よくわかる家庭の歯学」よりお届けいたします。
●虫歯の進行度合いと症状
C1
エナメル質に限った虫歯の事です。以前は「早期発見・早期治療」を謳い文句に、この程度の虫歯でも治療していました。今ではC1は治療すべきではないという考えかたに変わってきています。というのも、虫歯の自然治癒力がないと考えられていたのですが、エナメル質に限っては、再石灰化によって虫歯が治癒できるのです。とくにフッ素を使用する人に、再石灰化が起こりやすいので、削って治すのではなく、フッ素を使って再石灰化すかどうか経過を見ていくべきです。
ちなみに、エナメル質には神経が通っていないので、痛い、しみる、といった自覚症状はまったくありません。
C2
虫歯が象牙質まで達した虫歯の場合です。象牙質は、エナメル質と違って、再石灰化も起こさず、硬さも5~6倍柔らかいので、あっという間に歯の神経に到達してしまいます。
この状態でなるべく早く治療をしなければなりません。象牙質の虫歯も深くなると、痛みやしみるなどの自覚症状が出てきます。とくにデンタルフロスを使っていない人は、歯と歯の接点(コンタクト)から虫歯になり、本人が気づかないうちに虫歯が進行する場合が多いのです。
C3
歯の神経にまで虫歯が到達すると、常時の激痛になります。ここまで虫歯が進行すると、歯の神経を取り除かなければなりませんが、いったん歯の神経を取ると、その後その歯は、血液の循環による栄養を補給できなくなりますので、年々弱くなっていきます。そうしていつかは枯れ木と同じようになってしまいます。
ですから、C2の段階までのうちに早めの治療を受けることが大切です。
C4
虫歯に感染している部分を取り除いて、歯肉の上から歯の見える部分がほとんど無くなり、歯の根元だけが残っている状態です。虫歯が歯肉にまで達してしまうと、このC4の歯はもう抜歯になってしまいます。
早期治療が歯の寿命を縮めるとき
従来の歯科治療では「早期発見。早期治療」が常識的な方針でした。しかし、今ではフッ素の普及や定期的な健診により「早期発見、定期検診」が効果的だというスタンスになってきました。
歯の表面の最も硬い部分のエナメル質に限定した虫歯では、早い時期から削って治療することは逆に歯の寿命を縮めることにもなりかねないのです。
しかし、エナメル質は人間の体の中で最も硬い部分であり、虫歯の進行もとても遅く、数年たってもたいした進行がないこともよくあります。
それを歯科医院で簡単に削って詰め物をするために、虫歯より大きく削ってしまうと、数年かけて進む虫歯の進行を、一瞬にして数年分を削ってしまうことになるのです。
エナメル質の下にある象牙質はとても軟らかく、虫歯の進行が早いので、象牙質まで進行している虫歯は「早期発見、早期治療」の対象になります。
患者さんの立場のなると、自分の虫歯がエナメル質に限定したものなのか、それとも象牙質まで進行した状態なのかは、自分で判断することは難しいと思います。
歯の表面が黒っぽくなっているぐらいの虫歯は、エナメル質に限定していますので、削ってまで治療する必要はありません。
参考文献 よくわかる家庭の歯学 青山健一著 桐書房
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