噛むこととストレス解消
本日は、長谷川先生の「噛む 歯は命」よりお届けいたします。
噛むことは、ストレスの解消につながります。
人は何のために噛むのか、食物を細かく砕いて消化しやすくして、栄養を摂るばかりではありません。
我々が食事をするとき、美味い、不味いは主として味覚によって判断します。もちろん視覚も必要です。どんな美味な料理であっても、ごちゃごちゃ皿に盛られたり、汚い器で出されたのでは食欲が出ませんね。嗅覚による香りを楽しむのも大切です。
これらのほかに触覚があります。クラゲをを噛むとコリコリとした歯ごたえがあります。正月のカズノコ、また、たくあん漬けなども同じで、このクラゲにどれだけの栄養素やうまみがあるのかは別で、歯ごたえを楽しんでいるのです。硬いものをかみ砕く爽快感、触覚と圧覚を無意識な感覚としてとらえることは、ある意味で、ストレス解消となって、情緒的にも精神的にも安定するのです。
もし、虫歯や歯周病があって、硬いものが噛めないと、そのまま鵜呑みにして胃腸障害を起こし体調を崩すことにもなります。また、硬いものが噛めないということのイライラが、かえってストレスの原因となり、消化器系の調子を崩すと食欲不振ということになります。
すなわち、噛めないということ自体がストレスを作るのです。
硬いものを噛む快感、爽快感により、噛むことがこの上なく楽しいものになり、顎を動かして、ゆっくり噛むことが大脳皮質を刺激してストレスの解消になるのです。
また、歯牙形成中の青少年が、精神的ストレスを受けると、体内の代謝機能が弱まり、必要な栄養カルシウム、リンなどを吸収する能力が低下して虫歯になりやすくなります。
今の我が国は、食文化時代といわれ、世界各国の料理を味わい楽しむことが出来ます。これらの料理を楽しく、ゆっくり噛みながら味わえばよいと思います。
噛むことは精神の安定、ストレスの解消となり、セルフコントロールのためにも大切なことです。
さて、スポーツ選手、とくにプロの運動選手がチューンガムや噛みタバコを噛みながら試合をしているのを見かけます。
これは、噛むことによって集中力、判断力を高め、さらに闘争本能を奮い起こさせるためです。また、緊張感があると、唾液が出にくくなったり、出なくなります。チューインガムなどを噛むことで、大脳皮質を刺激して活発に活動させ、唾液の分泌を促し、その結果、リラックスできるからなのです。
噛み締める(咬合)必要性は、スポーツだけでなく、あらゆる運動行為の初動体勢に絶対必要なものです。
有名スポーツ選手の口の中をみますと、歯の面(咬合面)がすり減っています。これは、初動作や運動の瞬間、歯を強く噛み締める習慣があるからで、顎も張っています。これは、スタミナ源の食物を良く噛むからです。
人はだれでも、立ったり、座ったり行動を起こす瞬間、無意識のうちに歯をぐっと噛み締め(瞬発力)次の動作に移ります。もしも、このとき、虫歯や歯周病に罹っていたり、歯の欠損があって、強く噛み締められなかったら、持てる力をフルに発揮できないでしょう。もし、これがスポーツの選手であれば、競争に破れ、記録も伸びないでしょう。
噛む事によって、頭脳を明晰にして、集中力、判断力、思想力などを養うようにしたいです。
したがって、噛むことは、文化的、精神的に多大の影響をもっているのです。
参考文献 噛む 歯は命 長谷川正康著 求龍堂
最近のコメント