腸内細菌丸ごと調べる
本日は、日本経済新聞10月7日分の「かがくCAFE」からお届けいたします。
腸内細菌丸ごと調べる
「私たちが知る微生物は氷山の一角です。地球にすむ微生物の0.01%しか知らずに生命のシステムは理解出来ません。」
人間の体内や海中、土の中にいる微生物を分離せず、丸ごとまとめて遺伝情報(ゲノム)を読みとる新しい研究手法が注目されています。
この「メタゲノム」とと呼ばれる手法で人の腸内細菌を調べ健康診断などに応用を目指しているのが東京大学の服部正平教授です。
「これまで遺伝子を調べることが出来たのは培養で増やせる微生物だけ。実はほとんどは培養出来ません。培養出来るものも、出来ないものも区別せず、例えば海水1リットル中、土壌1グラム中の微生物群の遺伝子を丸ごと調べるのがメタゲノムです」
--ごちゃ混ぜにするとどの微生物の遺伝子だか分からないのでは?
「見つけた遺伝子を手がかりにしてその持ち主の微生物を探し出すことは出来ます。また単純な構造の微生物体を人工的に合成して、有機遺伝子を組み込む事もできるようになりつつあります。」
--この研究の目的は
「ひとつは宝探し。ペニシリンをはじめ多くの薬が微生物から見つかりました。新薬のネタが見つかる期待があります。米国にはバイオ燃料を効率よく作る微生物を探している科学者もいます。もう一つの狙いは環境です。体内にはたくさんの微生物がいます。それらを知ることが自然や体内の環境を知ることになります。」
--それで腸内細菌を調べているのですか
「腸内細菌の研究は歴史がありますが、ビフィズス菌が多い方が健康的だというように大きな傾向しかわかっていなかったのです。腸内細菌のゲノムをみると、病気の人と健康の人では機構が違います。離乳前の赤ちゃんの離乳食を取り始めた赤ちゃんとでも違います。個人差もあります。それが飲み薬の吸収の差にも繋がっているらしいのです」
「人間が病気にかかりやすいかどうかは遺伝的なものだけでは決まらないのです。生活習慣も関係します。食べたものが腸内細菌と、相互にどうかかわりあうかも重要です。生活習慣病は脂肪の摂りすぎといったアナログ情報でしか表せないですけど、腸内細菌のゲノムは計量可能なデジタル情報。体質や病気の診断に役立てられるのです」
--研究は、日本以外の国でも盛んですか
「米国立衛生研究所(NIH)が腸内細菌の研究を始めました。英国やフランスなどの研究機関でも取り組んでいます。12月に欧米やアジアの国々の科学者が集まって協力して研究を進めることを話しあう予定です。」
腸内細菌、ヨーグルトが良い位しかわかりません、
これから気にかけたいです。