知覚過敏を引き起こす歯の状態とその状況2
昨日の続きです。
9:発生学上の問題により生じる知覚過敏
発生学的に病的な知覚過敏を持つ患者さんの存在が報告されています。しかし、その原因がエナメル象牙境をセメント質を覆っていないためなのか、全体的に痛みに対する閾値が低いためなのかについては今の所不明です。
10:修復物による知覚過敏
修復物を装着する際に考えられるいくつかの要因について、ある種のアマルガムは、充填後(24~48時間)の収縮により、感受性が亢進することが知られています。コンポジットレジン充填は、操作中の汚染や不適切なエッチング処置が辺縁漏洩を引き起こすことにより感受性を高めます。また不適切な歯質の乾燥も感受性を向上させます。
一般的に歯髄は窩洞形成時、すでに障害を受けていますので、修復処置後にしみるのは当然といえます。また、修復後に咬合が変化したことにより知覚過敏が発生することもあります。
11:薬剤による知覚過敏
抗ヒスタミン剤や血圧降下剤の長期服用は唾液を減少させます。口腔乾燥は唾液の保護作用が低下するので、酸により障害を受けている歯質をさらに悪化させます。
象牙質が露出している場合は、象牙細管の開口を促進させる要因となります。また唾液の減少は、結果的にプラークを蓄積させるため、唾液のpHをう蝕に引き起こすレベル(象牙質う蝕はpH6.0~6.8 エネメル質う蝕はpH5.5以下で発症)まで低下させてしまうのです。
12:ホワイトニングによる知覚過敏
生活歯に対するホームホワイトニングによる知覚過敏は、10%のカルバミド酸に含まれる2つの成分(3%の過酸化水素水と7%の尿素)が速やかにエネメル質からエネメル質を通して象牙質に浸透、通過し、短時間で歯髄に到達することで起こります。
可逆性の歯髄炎へと進行する感受性の亢進は、歯髄への明らかな害が特定されない場合、象牙細管内容液の移動、歯髄に接する歯科材料、浸透圧の変化などにより引き起こされることが考えられます。過酸化物の濃度にもよりますが、ホワイトニングすべての施術(オフィスホワイトニング、医師に処方箋が無くても店頭で買えるもの)に引き起こされる可能性がります。
以上のように、象牙質知覚過敏症は、様々な要因によりエナメル質やセメント質が喪失し、象牙細管やセメント質が喪失し、象牙細管が露出して発症します。「しみる・痛い」と訴えている患者さんの正しい鑑別診断のために、先述した12項目の象牙質知覚過敏鑑定別において考慮すべき要因を参考にしてください。
参考文献 チームで取り組む 象牙質知覚過敏症 深川優子 安田登 共著 クインテッセンス出版
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