いろいろな感染症
本日は、宮田隆先生の著書「歯周病の本当に怖いわけ」からお届けいたします。
いろいろな感染症
歯周病は感染症です、などというと、あなたはマラリアや結核と同じ恐ろしい伝染病を想像するかもしれません。
歯周病は伝染こそしませんが、実は恐ろしい感染症であることにはかわりがないのです。
感染症というのは「病原性を有する微生物が体内に入り、そこで定着、増殖し特定の局所あるいは臓器に障害を引き起こすこと」と難しく定義されていますが、要するに細菌やウィルス、原虫など微生物が引き起こす病気で、生活習慣病や糖尿病などとは全く違う病気です。
少し感染症のことをおさらいしてみましょう。
端なる風邪と思われがちなインフルエンザは、世界中に広がるウィルスが原因の大変怖い感染症です。
1918年に大流行したスペイン風邪というインフルエンザでは、世界中で2.500万人が感染によって命を落としました。日本でも38万人が犠牲になりました。
いま、鳥インフルエンザが人に感染するのではないかと、世界中の保険機構が監視の目を光らせているのはご存じだと思います。
マラリアは特に発展途上の国々の人たちを悩ませる感染症ですが、以前は先進国でも猛威をふるっていました。マラリアはウィルスや細菌より大きい原虫という微生物から感染します。
マラリア原虫はハマダラカという蚊の唾液腺に寄生しています。ハマダラカは夕方に活発に活動して雄と雌が交尾します。妊娠した雌のハマダラカは、栄養が必要なため人の血を吸います。その時に唾液腺に寄生していたマラリア原虫を人に体内に注入するのです。
ですから、刺すのは雌だけです。著書らの歯科医学教育国際支援機構による現地活動のように熱帯で仕事をしていると、日の沈む前後には蚊に刺されないよう特別注意します。
マラリア原虫は最初に肝臓に侵入しますが、その後、赤血球を新たな寄生場所とします。
その時に高熱がでます。熱帯熱マラリアとか三日熱、四日熱マラリアと呼ばれるのはこの時期です。ですからマラリアは、赤血球が破壊されるため、ひどい貧血症状を起こします。アフリカでは貧血になった子供達に輸血をして、そこから今度はHIVに感染してしまうなど悲劇も起きています。
AIDS(後天性免疫不全症候群)を発症させるHIVもウィルスです。ウィルスは細菌よりさらに小さい、最も小型で細胞構造を持たない単純な生物です。いや、ウィルスの構造から無生物という考え方もあるくらいです。
また、遺伝情報を伝える核酸であるDNAかRNAのいずれかしかもっていませんし、自分でエネルギーを出して増殖する能力もありません。ですから、いつまでも他の細胞に寄生していないと生きていけないのです(これを専門的には偏性細胞寄生虫といいます)。
HIVは免疫を担当するT細胞に寄生します。そのためHIVに感染すると免疫が働かなくなり、多くの人はAIDS になってしまうのです。
私たちに身近な感染症として最近注目を集めているのが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因となるピロリ菌でしょう。
ピロリ菌も歯にこびりついた歯垢からも感染することが示唆されています。
参考文献 歯周病の本当に怖いわけ 著者 宮田 隆 医歯薬出版
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