吸血コウモリ!
今年になってから、数々の本を読んできましたが、中でも「ヒストリアン」はとても難航した本のひとつでした。
いつも鞄に入れて持ち歩き、気力を振り絞って読むのですが、なかなか奥が深くて、ページをめくるスピードがとても遅かったのを覚えています。でも、それが作者の意図するところだったかもしれません。
「作中の登場人物が、苦労して冒険しているのだから、楽して読めると思うなよ」って感じでしょうか?
そのせいか、後半になってくると、徐々にペースが上がっていき、前半のもたつきは嘘の様にどんどん読み進むことが出来ました。読み終わった後の読了感はすばらしいものがあり、大変なんだけど、また近いうちに読み返してみたいと思います。今度はラストを知っているので、今まで見逃していた箇所が必ず見つかると思いますので。
その「ヒストリアン」の内容なのですが、実はドラキュラの話なのです。そして、そのドラキュラに対抗する武器は、歴史上の事実を解き明かす事によって明らかにして、現在でも存在していると言われる場所を探し出すというものでした。
さて、なんで、このようなドラキュラの話をしたかといえば、本日話す内容が、吸血コウモリの話だからです。「唾液は語る」の中に、この様な話が出ていました。
「吸血こうもりのありがたい唾液」
血液を固まらせるもとの物質は、血液中にある線維素原(または繊維素原、フィブリノーゲン)というタンパク質です。それが、線維素(フィブリン)になると血液が固まります。
この線維素を溶解して減少させる酵素があって、その作用を線維素溶解、略して「線溶」と読んでいます。
つまり、この酵素が働くと一旦固まった血液を溶解することができ、私たちの体の中でもこの酵素が血管内の細胞から出ています。
例えば、机の角に足をぶつけて出来た紫色の内出血が次第に色あせて見えなくなるのはこの酵素の働きです。
哺乳類の血を吸って生きている動物に、ドラキュラのしもべとして映画でも有名な南米の吸血コウモリがいます。彼らの唾液にはこの線溶を起こす酵素の一種(プラスミノーゲンアクティベーター)がたっぷりと含まれているので、吸い取った血液は口や胃の中で固まってもすぐに解けてしまいます。
そこで、この様な吸血動物の唾液中の酵素に着目し、血管内で血液が固まって起こる心筋梗塞や脳卒中の治療のために血栓溶解剤として利用しようという試みがなされてきました。
最初に注目されたのはヒルで、毒蛇なども盛んに研究されました。最近は、吸血コウモリの唾液が人に対するアレルギー等の副作用も少なく安全性が高いということで研究が進んでいます。
参考文献 唾液は語る 山口昌樹 高井規安共著 工業調査会
吸血コウモリ…悪者なだけじゃないのかぁ。(^_^;)
「ヒストリアン」も「唾液は語る」も難しそうだけど、
ちょっとそそられます。