インビザラインモニター商法事件に思うこと。
銀座にあったデンタルオフィスXという歯科医院で「インビザラインの治療をSNS等で宣伝すれば治療費をキャッシュバックし、治療代実質無料」というモニター商法が行われたようです。
そのモニター商法で契約した患者さんの数が650人を超えたものの、キャッシュバックされるはずだった支払いの遅延が発生してしまい詐欺事件として公になってしまったものです。
インビザラインについて私個人の見解を少し書かせて頂くと、システムとしては大変素晴らしいものだと感じています。実際、私もインビザラインの研修に参加してインビザライン社より「インビザラインDR」との称号を頂きました。
しかし、このシステムは矯正初心者が生半可な知識で臨床に取り込むと大変な事になると思います。
まず、ワイヤー矯正での経験を十分に積んで歯の移動や動き方を熟知したDRが行うべき治療法だと感じました。
ワイヤー矯正に関して言えば、まずセファログラムや顎機能(キャディアックス)、ブラックスチェッカー、模型診断等を行い、実施いたします。
おそらく、インビザライン上級者はこうしたワイヤー矯正と同じ、もしくは同程度の検査を行ってから綿密にパソコン上で歯の移動の設計図を組み立て、治療途中で起こるであろうトラブルも鑑みて設計を行っているはずです。
インビザライン矯正(マウスピース矯正)はこうした基本検査をしっかり行っても出来るし、全く検査をしなくても、パソコン上で歯を動かせてしまうという点が非常に怖い所なのです。
つまり、上級者が設計したマウスピースも矯正の未熟な先生が設計したマウスピースもパソコン上ではあまり大差なく設計出来てしまうということなのです(診る人がみればわかる)。
それとインビザライン社が認定したプロバイダーランクと言われるインビザラインの症例数に基づいて認定されるランクなのですが、スキルのうまさで認定されるものでは無く、症例数が多いと認定されるものなのです。そのため、インビザライン社が認定していない矯正でも上手い先生が沢山いるのです。
今回の問題になったデンタルオフィスXの医院にはレッドダイヤモンドプロバイダーに認定された先生がいたという話なのですが、所属していたすべての先生がそれに認定された訳では無く、「技術が優れている」では無く「症例数が多い」という事なのです。経験値は多いけど良好な治療をしたものでは無い可能性があるってことなのです。
それとマウスピース矯正は患者さんの忍耐も必須条件となります。一日のうちの大半を装着していないといけないために、脱落してしまう患者さんも非常に多いのです。
ワイヤー矯正で装着するワイヤーのデザインは、多くの検査を行わないと決定出来ないため、患者さんの骨格や噛み合わせの分類に応じて屈曲を変えます。そして患者さんの忍耐力とは関係なく強制的に歯に装着して行くので、グイグイと歯が移動して行きます(ワイヤー矯正でも歯科医師の分析能力が悪いと全く歯が動かないけど)。
それと月に1度ワイヤーを外して、口腔内の歯の移動状況を診ながら、ワイヤーを調整するのでかなり治療期間が短いです(ここでは書けませんが、想像しているより短時間で矯正が終了する場合が多いです)。
ここまでがインビザラインに関する私の考えです。
それと、今回の事件で驚いた事があります。それはインビザラインは自費診療になりますので治療費は各歯科医院が設定して構わないのですが、このデンタルXのインビザライン治療費(187万円)がかなり高額だということです。とても考えられない治療費です。おそらく私の歯科医院や周りの先生たちもこの治療の半分以下だと思います(同じ治療なのに東京はかなり高い。恐ろしい)。
あと、こういった詐欺事件が数年に一度くらい起こりますが、「世の中そんな上手い話は・・・・」ということです。
まあ、審美的コンプレックスにつけ込まれて、騙されてしまったのでしょうね。
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