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2009年10月23日 (金)

大人は時間を短く感じる?

本日は、日本経済新聞 2009年10月18日号のサイエンスのページの『ナゾ謎かがく』の欄よりお届けいたします。

◇大人は時間を短く感じる?

子供の頃と比べ、大人になると時間が速く過ぎると感じる。

有名な説明は「ジャーネーの法則」と呼ばれるものだ。

同じ1年でも10歳と60歳とでは人生における比率が10分の1と60分の1で全く違う。高齢者はその分、同じ時間でも短く感じるという説明だ。

しかし、実際には時間経過の感じ方には個人差があるし、子供と老人とで60倍の差があるわけでもない。心理学実験によって、加齢により時間認識が変化する原因が探られている。

時間の経過をどのように感じるかは心理学で「時間評価」の問題といわれる。人には心的時計といえるものがあり、これが物理的な時計よりも速く進めば、実際の時間経過をみて「まだ1時間しかたっていない」と感じるし、逆に心理時計が「もう一時間過ぎた」と感じる。

千葉大学文学部の一川誠・准教授によると、心的時計の進み具合には身体の代謝の状態が大きく影響しているという。

身体の状態が活発なら心的時計の進み方は速く、不活発なら遅くなる。

高齢になると一般に代謝は低下する。そこで心的時計の進み方が鈍り、時計の経過を速く感じるという説明が可能だ。「年をとるにつれ動力源のゼンマイが遅れているイメージ」(一川准教授)

また、会議中に何度も時計を見るなど時間経過に注意を向けるほど、同じ時間でも長く感じられることが知られている。

時間を気にする回数が多いほど経過時間を長く感じるとの説がある。これが子供と大人の違いに関係している可能性がある。子供には待ち遠しい行事が多いのに対して、大人になると慣れ親しんだ刺激の少ない出来事ばかりのため、時間経過に注意を向ける回数が減り、その分時間の進行が速く感じられる。

さらに、広い場所にいる方が、狭い場所よりも時間が長く感じられるという実験結果がある。大人になって昔の小学校を訪れたとき校庭が小さく感じられる。同じ空間でも子供は広く認識し、時間に経過をゆっくり感じさせる傾向を強めているとの見方もある。

加齢に伴って時間経過を速く感じる理由には、これらのいくつかが複合的に関係していると考えられている。

「それぞれの要因の詳しい解明や、お互いの関係はまだ分からないことが多い」と一川准教授はいいます。

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