遺伝子診断法
本日は鴨井先生の著書『新・命をねらう歯周病』よりお届けいたします。
◇生まれる前から歯周病にかかることがわかる?
現在、遺伝子診断はさまざまな病気を対象に、その病気へのかかりやすさを検査するために小用されようとしています。
人間の遺伝子の配列がほぼ解明されたことにより、例えばある病気にかかっている人と健康な人の遺伝子を比較することで、どの遺伝子違いがあれば、どの病気が発症しやすいかをしることが出来るのです。
極端な話しですが、羊水の中に含まれている胎児の細胞のかけらさえ得られれば、お母さんのお腹の中にいるときに既に将来かかるかもしれない病気の種類を推測できるのです。
もちろん、病気になるには遺伝子のような先天的な問題だけでなく、生まれてから後の食べ物の好みや生活環境などといった後天的な因子も関係しますので、すべてを遺伝のせいに帰することはできません。しかし、その病気への「かかりやすさ」が推測できれば、あらかじめ日々の生活に気をつけたり予防を心がけたりすることが出来ます。
これと同じく歯周病の場合も、かかりやすい人とそうでない人のいることが分かっています。ですから、遺伝子診断でかかりやすいと診断された人には、プラークコントロール(ブラッシングなど)を徹底的に行う習慣を早くから身につけさせ、歯に汚れが付着しにくい繊維質の食べ物をよく食べさせる、などといった策をあらかじめ講じることが出来るのです。遺伝子操作は、歯周病予防にとっても有効な検査方法といえそうです。
歯周病への「かかりやすさ」については、最近の研究によって新たな事実に光が当てられつつあります。歯周病のような生活習慣病への「かかりやすさ」には、1種類の遺伝子だけでなく、何種類かの遺伝子の異常が関係している、つまり、歯周病は多因子性遺伝子性疾患であることがわかってきたのです。この場合の異常とは遺伝子の塩基配列のたった一カ所の異変のことで、遺伝子の一塩基多型(SNPs:スニップス)と呼ばれています。
現在、多くの研究機関で、SNPsの組み合わせと歯周病へのかかりやすさ、再発のしやすさを調べ上げるための技術開発が行われています。今のところ歯周病のSNPs候補として上がっているのは、免疫に影響を与えるサイトカインに関するものや、外敵を攻撃する白血球の一種である好中球の表面物質に関するものなどです。人種による差もあることがわかっていますので、特に日本人の歯周病にかかりやすい遺伝子(疾患感受性遺伝子)研究が組織的に進められています。
近い将来、歯周病に関わる多くのSNPsが発見され、歯周病のなりやすさの診断精度は飛躍的に高まるだろうと、期待が高まっています。
参考文献 新・命をねらう歯周病 鴨井久一・沼部幸博 砂書房
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