鼻呼吸で花粉症の症状和らぐ
本日は日本経済新聞平成20年2月3日分「健康」版からお届けいたします。
「鼻うがい」で口呼吸を回避
風邪や花粉症で鼻がつまると、ついつい口で呼吸をしてしまいます。しかし、口呼吸に頼ると、体の細菌への抵抗力が弱くなり、症状を悪化させることにもなりかねません。「鼻うがい」をすると、鼻から吸って吐くという呼吸の基本動作を取りもどすことができます。
利点の多い鼻呼吸
嗅覚(きゅうかく)ではなく呼吸器としての鼻には、「浄化」「加湿」という三つの機能があります。
ほこりや細菌、ウィルスなどが混じった空気は鼻から入ると鼻腔(びこう)にびっしりとはえた細く長い繊毛と、それを保護する粘膜の力を借りて、きれいになります。
繊毛の表面についた細菌は、繊毛のしなるような動きで40分から1時間かけてのどから食道を通り抜け、胃に流れ落ちます。細菌の病原性が出る前に胃の中で死滅するために感染が防げます。
冬場の冷たい乾いた空気も、繊毛と粘膜によってセ氏30度まで温められ、湿度も90%と、のどや肺に刺激のない状態に変わります。
利点の多い鼻呼吸ですが、忘れてしまって口呼吸している人は意外と多いのです。かぜや花粉症による鼻づまり以外に、鼻のリンパ組織「アデノイド」の肥大化や、肥満などが原因です。
口をポカンと明けている機会の多い人や、意識して口を閉じると息苦しさを感じる人は要注意です。
今の季節、口呼吸をすると、ホコリや細菌の混じった、冷たく乾いた空気がそのまま気管や肺に入り込みます。のどには「浄化」「加湿」「加温」の三機能はありません。細菌などは繁殖しやすいのです。
口呼吸は花粉症を悪化させる要因にもなります。
東邦大学医療センター大橋病院の大木幹文・准教授は「花粉症を訴える人の4割は家のホコリやダニに対してもアレルギーがあります。いつも口呼吸で鼻粘膜が荒れているため、花粉の影響も受けやすいのです」と解説します。
そこから抗原となる花粉が体内に入り、鼻水やくしゃみなどの症状が悪化、さらに口呼吸に頼らざるをえないという悪循環に陥ります。
部屋の湿度が20%以下になると鼻の中は乾いてしまいます。繊毛の働きが鈍ります。マスクを付けたり加湿器を使ったりして乾燥を防ぐのも手ですが、鼻うがいをするとゴミや花粉の除去にもなります。
使うのはセ氏37~38度のぬるま湯です。粘膜が刺激されて「ツーン」と痛くなるのを防ぐため、体内の状態と同じように塩分を含んだ生理食塩水にします。濃度は水1リットルに対して9グラム。毎回計るのが面倒な人は、しょっぱさを味で覚えて、それを目安にするのも良いでしょう。
水が垂れることもあるので、胸にタオルなどをあて、洗面所で顔を少々前にだした姿勢で行います。
一方鼻の穴を人差し指でふさぎ、もう片方の穴から吸い込みます。最初は水中に潜ったような息苦しさを感じます。急いでやるとむせることもあります。落ち着いて口で息をしながらやるのがコツです。
うがい後、何かが残ったような感じがするかもしれませんが、鼻を軽くかむくらいにとどめましす。強くかんだり、初心者が無理に鼻の奥まで吸い込んだりしようとすると、水が耳に入って中耳炎を招くこともありますから気をつけましょう。
1日1~2回
西端耳鼻咽喉科(東京・千代田)の西端慎一院長は「入れた水を口から出さず、鼻から出すだけでも十分効果があります」と語ります。ほこりや花粉を洗い流せるだけでなく、粘膜の乾きを防ぎ、繊毛の働きを改善できるからです。のどに落とすのは十分に慣れてからで十分だそうです。
ただ、鼻うがいのやりすぎはよくありません。粘膜がなくなる恐れがあります。あまり丁寧に洗いすぎないよう、一日1~2回、外出から帰ったときや起床時にやるのが理想です。
大木准教授は「鼻はとてもナーバス。爽快(そうかい)感を求めてはだめ。やっていて物足りないぐらいがちょうど良い」とアドバイスします。
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