ブラキシズムに注意
本日は、歯科材料のGC(ジーシー)株式会社から歯科医師向けに出された小冊子「ヘルシーダイヤモンド」よりお届けいたします。
睡眠中の歯ぎしり「ブラキシズム」に注意
睡眠中の“病的な歯ぎしり”
歯の表面がすり減り、被せものがしょっちゅう取れる。
朝起きると顎に疲労感や不快感があったり、こわばったりしている。そしてこの半年以内に2度以上、人から「寝ている時に歯ぎしりをしていた」と言われた人は、要注意です。
「ブラキシズム」という、口の異常な習癖を“病的”に起こしている可能性があるからです。
ブラキシズムとは、上下の歯をすりあわせて音を出すグラインディング(いわゆる「歯ぎしり」)、音は出さないけれど歯を強く噛み合わせるクレンチング(「噛みしめ」)などの運動障害の事をいいます。
緊張のあまり歯を噛み締めるなどは昼間でも起きますが、ブラキシズムは主に仮眠も含んだ睡眠中に生じます。
人はものを噛んだり唾液を飲み込むときに上下の歯が接触しますが、それは1日15分前後で非常に短いものです。その他に、重いものを持ち上げる時などを除くと、上下の歯を常に2ミリほど離れていて接触していません。
しかし睡眠中には健康な人でも「歯ぎしり」や「噛み締め」といったブラキシズムを一晩に15分前後も行っています。それが長時間に及び過度になってきますと、“病的”なブラキシズムとなり、口の中や周りの問題が起こってきます。
病的なブラキシズムは全身に関わる問題
ブラキシズムの研究を長年にわたり行ってきている小林義典日本歯科大学教授は、「病的なブラキシズムは、睡眠障害や情動のストレス、自律神経系の問題も起こす全身的な疾患として注意しなければなりません」と語ります。
病的な歯ぎしりや噛みしめの力は、ガムを強く噛んだときの数倍から数十倍に達するといいます。病的なレベルの歯ぎしりが続くと歯がすり減ったり、義歯や冠が壊れたりするだけでなく、咬筋の肥大による容貌の変化や強烈な肩こり、耳の障害、顔面頭部の痛みなどを起こします。またブラキシズムは、顎関節症、情動ストレス、睡眠障害、特に睡眠時無呼吸症候群なども起こします。
特にブラキシズムは眠りを浅くし、レム睡眠を阻害する睡眠障害を起こすことに注意しなければなりません。また、病的レベルの歯ぎしりの約80%が、睡眠時無呼吸に密接に関連しているこが確認されています。
さらに、この約70%が危険な中枢型の睡眠時無呼吸であることが分かっています。
「歯を噛みしめない」と自己暗示を
睡眠中になぜブラキシズムが起きるのかについてはまだ分かっていないと小林教授は次のように説明します。
「病的なレベルに増大させる原因としては、精神的ストレスに代表させる〈咬合問題〉が議論されています。歯ぎしりと情緒的問題との関係を長期に調べた臨床研究では、両者の密接な関係が認められています。ただ、この場合の歯ぎしりは、1日くらいで元に戻る一過性の反応で、危険性が少ないと言えます。
一方、咬合問題で私たちは、健康な人の下の奥歯に厚さ0.1ミリの小さな干渉を付与してかみあわせを変化させ、睡眠中の生体現象の変化を見ました。その結果、干渉を付与すると、歯ぎしりが持続的に増大すること、顎関節症に匹敵あする機能障害の症状が出ることに加え、情動ストレス、自律神経系の機能の変化、睡眠障害を起こすことが分かりました。」
このことから、病的レベルの歯ぎしりを持続させる要因の一つとして、微細な噛み合わせの問題が重要となります。
メカニズムがまだ解明されていないので、治療法は対処療法となります。中でも、寝るときに歯にスプリントを装着する「スプリント療法」が歯ぎしりをなどを質的に軽減させることが分かっています。また、「歯はわずかに離して寝る」などと、就寝間に繰り返して唱える「自己暗示療法」や、「薬物療法」、「行動療法」、「理学療法」なども効果があるといいます。質の良い睡眠を確保するためにも、ブラキシズムの兆候や症状がある人は、歯科専門医の受診をおすすめいたします。
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