覚醒剤中毒による悪影響は口の中にも
今日のトピックはDental Tribuneからです。
私は、覚醒剤中毒の方の口の中を診察した事がないのですが、どうやら深刻な状況の様です。
以下全文です。
米国歯科医師協会(ADA)は、メタンフェエタミン(メセドリン)などの非合法薬物がアメリカの歯科医師事情に及ぼす破壊的な影響に対して、これを撲滅するための戦いのまっただ中にあるとしています。メタンフェタミンは依存性を有し、精神および社会行動に異常をきたすだけでなく、俗に「メス・マウス(meth mouth)」といわれる広汎性の齲蝕(虫歯)や歯肉炎を引き起こすおそれがあります。
覚醒剤が、歯や歯肉に悪影響を及ぼす理由についてはっきりしていません。このきわめて依存性の高い薬物を摂取すると代謝機能が亢進し、ドーパミン、ノルエピネフリン、ソロトニンといった神経伝達物質の分泌が促進し、それらの再取り込みが阻害されます。中毒患者は食事、睡眠、衛生などに注意を払わなくなります。
中毒が悪化すると偏執症状が現れ、幻覚に悩まされるようになります。長期乱用により、脳血管障害、心疾患を引き起こし、また歯肉の腐蝕、歯の脱落も引き起こす事になります。
メタンフェタミンは口腔乾燥症にも関係しており、これは口腔内の微生物環境を変化させ、有害微生物に対する抵抗力を変化させるためと考えられます。
中毒患者はしばしば歯ぎしり、食いしばりが認められ、歯磨きもせず、あめ玉をしゃぶり、ジュースを飲んでいます。
歯科医療関係者は覚醒剤乱用が少しずつ蔓延していることを認識する必要があるとADAは警告しています。
「メタンフェタミンは製造が簡単で、手軽に入手出来るのが患者にとっての魅力であり、クラックやコカインなどと比較して効果が長く持続する」とADA担当者は述べています。
「メタンフェタミンには本質的に中枢神経系の賦活作用があるが、脳に対して永久的なダメージを与える恐れがあるとともに、口腔の健康にも悪影響があることを忘れてはなりません。歯科医療関係者はメタンフェタミンが口腔の健康に及ぼす影響を知り、中毒患者の処置に当たって十分に配慮する必要があります。」
ADA会長Robert M Brandjord氏は「meth mouth」は広範囲にわたる齲蝕を引き起こし、しばしば全顎抜歯して総義歯という経過をたどることになる」と議会関係者に語りました。
1月にワシントンで行われたフォーラムで、救急病院、刑務所、歯科医院は皆、この「meth mouth」の蔓延に困り果てていると同氏はコメントしています。
「メタンフェタミンに犯された歯は手の施しようがなく、全顎の抜歯をせざるをえない」。
同氏はさらに次のように述べました。
「このことは、おそらく歯科医療費の増加を招くことになるだろうし、もしかしたらすでにそうなっているのかもしれない」。
数字が示す悲劇的な実情
米国保険社会福祉省の一部門であり、薬物乱用防止と更正をつかさどるSAMHSAは、2005年12歳以上で19万2,000人が新たに薬物を使用したと推定しています。
2002~04年の間、新規使用者数はおそよ30万人と一定の水準で推移していました。2004年には31万8,000人であったのが、2005年には急激に低下しています。
「メタンフェタミンの使用者数に関して、全年齢層では2002年~05年にかけて5.3~4.3%へ、対前年比でも0.7~0.5%といずれも減少したが、12歳以上の年齢層では対前月比はそうならなかった」とSAMHSAは報告しています。
「対前月比使用者数は2002年以来ほぼ一定であるが、他の非合法薬物依存もしくは乱用を伴うメタンフェタミン使用者数は2002年の16万4、000人から05年の25万7,000人へと急増している」。
メタンフェタミン使用者gは主に18~40歳の男性であるが、最近は大学生やクラブに出入りする若者に流行の兆しが見られます。2003年のうち全国の調査では12歳以上の米国人のうち1,230万人が過去に少なくとも1度はメタンフェタミンを試してみた事があることを明かしました。
若年者に見られる原因不明の進行性の歯および歯肉の病変、特に頬側平滑面(歯のほっぺたがわ)および前歯隣接面(前歯と前歯の間)に生じる特徴的なパターンを持つ齲蝕に、歯科医師はもっとも注意を払うべきであるとADAは警告しています。
日本は、このような症例はかなり少ないのですが、米国ではかなり深刻なようです。
こわーいお話、
これからの若者によく聞いて欲しい。