フィンランド歯科事情
先日、波多野先生が書かれた「歯から始まる怖い病気」という本を購入しました。
今後も、中身を少しずつご紹介したいと思いますが、その中に虫歯が少ない国、フィンランドの歯科事情が書かれていましたので、ご紹介いたします。
以下全文です。
北欧にフィンランドという国があります。
森と湖が数多く点在し、長く厳しい冬にはサウナで体の芯まで温まった後で氷の張った湖にザブンと飛び込む光景が見られます。
国土の大きさは日本と同じくらいですが、人口はわずか500万人。日本は1億2700万人強なので30分の1です。
広大な土地に豊かな森林が広がり、わずかな平地に人間がポツンポツンと住んでいる国といったらイメージが湧くでしょうか。
人口が少ないフィンランドにとって、人間は最大の資源であります。1人でもかけることなく立派に成長して、しっかり働いて税金を納めてもらわなくては国が成り立たちません。だから子供には徹底して教育を施します。1人の落ちこぼれも無いように、小学校からきっちり勉強を教えます。
オリジナルでフィンランド教育メソッド(方法)を作り、年齢や教材にかかわらず、「自分の言いたい事をいかに伝えるか」を徹底的に教育します。グローバル社会を生き抜くために、自分の意見を理論的に言葉で表現する訓練を受けるのです。
こうした教育の成果が実を結び、国際統一テスト「PISA」の読解力試験の第1回目(2000年)、第2回(2003年)と連続で世界一に輝きました。このテストで日本の成績は8位と14位に留まっています。
もう一つ、フィンランドが取り組んでいるのが、「歯」に対するケアであります。国民の健康のために、絶対に歯を抜かないようにして、健康増進を図ろうと国を挙げて対策を行っています。
このためフィンランドでは、1975年から徹底した予防歯科対策を実施しています。特に子供は虫歯になりやすいので、幼稚園と小学校ではフッ素による口腔洗浄を行い、保健所でフッ素化合物を無料で配ります。
子供たちは定期的に歯医者に通い、専門家に歯を磨いてもらいます。もちろん保険診療で無料です。
キシリトールはフィンランドで発見されました。日本でも「虫歯予防にキシリトールガム」というコマーシャルでお馴染みですが、フィンランドでは1975年にキシリトールガムが発見されています。このように「フッ素とキシリトールガム」というダブルの予防歯科対策で虫歯が激減しました。
統計にもはっきりと現れています。1975年のフィンランドの虫歯の平均は6.9本で、日本の5.6本よりも多かった。スタート時には、フィンランドの国民は日本人と同じ程度しか歯に対する認識がなかったのです。
ところが、78年に虫歯の本数は同数になり、91年には1.2本と激減しました。現在は1本を切っています。
93年の統計ですが、日本人の虫歯は平均3.6本であります。この30年の間に、虫歯で歯を抜くフィンランド人は皆無といってい状態になり、日本人は未だに虫歯で歯を抜く人が3割もいるというのが現状です。
国を挙げての虫歯予防が功を奏して、大人の歯もしっかり残っている。
フィンランド人は80歳でも、自分の歯が19本も残っています。永久歯28本(親不知をのぞいた本数)のうち、19本も残っているということは、抜いたのがわずか9本で、大半が自分の歯だということであります。自分の歯で好きなものをおいしく食べられるので、高齢者も元気です。
年を取ると歯が抜けるものだと思うのは、日本人にとって常識であっても、フィンランド人にとっては、非常識だということがおわかりいただけますでしょうか。
日本国内には、平成18年4月の統計で、6万7379施設の歯科診療所があります。これには小児歯科、矯正歯科、審美歯科も含まれるが、決して少ない数字ではありません。
日本人は治療のために歯科へいきます。虫歯や歯周病治療、あるいは歯をクリーニングする審美治療や歯列矯正などで歯科医院に通っています。
一方、フィンランド人は、予防のために歯科へいくのであって、治療にいくわけではありません。
日本人の多くは、歯の治療は痛いから出来るだけ先延ばしにしたいと考えるようです。あの大人の、しかも分別のある大人の男性がいうのだから困ったものです。
しっかり予防すれば虫歯にも歯周病にもならないので、痛い治療は必要ないのです。それをしっかり理解しておけば、歯医者は怖くないし、もしかするとこれほど多くの歯科医は必要ないのかもしれないのです。
食事をしたら歯を磨く。歯を1本、1本丁寧に磨くことで、虫歯や歯周病の原因菌を取り除く。これを毎日やってさえいれば、歯の治療などいっさい必要なくなります。
こんな簡単な事が実践できずに、相変わらず、日本人の歯は失われいていきます。治療より予防、そのための歯磨きという、いたってシンプルな法則が身に付いていない日本人は世界的にみてデンタルIQが低いといわれても仕方がないのでしょう。
参考文献 『歯から始まる怖い病気』波多野尚樹著 祥伝社新書
予防に徹したい、そんな思いです。