『ISの人質』を読んで
人間の行動パターンはざっくり言うと、「狩猟民族」と「農耕民族」の二つに別れると思うのです。 狩猟民族は自ら行動し獲物を獲得し、獲物の移動に伴って自らも移動し生活をする。 農耕民族は一つの場所に留まり、農地を耕し自給自足を考える。 私は自分の事を「農耕民族」だと思っています。 出来るだけ同じ場所を移動したくないですし、その場所で出来る事を考えてしまう。 旅行も日帰りや近場を考えてしまいますし、行ったことの無い場所にはあまり興味がわきません。 飲み会でもほぼ席を動きませんし(笑)。 だから、この地で開業してじっとしているこの商売には自分には合っていると思っています。 狩猟民族の代表的な仕事としては、ジャーナリストやカメラマンなどが上げられると思います。 私なんかハワイやグアム、バリといった観光地でさえ、怖くて行こうとすら思わないのに、彼らは言葉の通じない中東や危険な地域まで己の好奇心に任せて旅立つ。 今回読了した『ISの人質』は、こんなジャーナリストやカメラマンがISの戦闘員に捕まり、拘束された後の話。 我々が抱く、ISIS(イラクとシリアで発生したイスラム過激派)のイメージは残虐で容赦が無いようなイメージがあるのですが、この本を読むとそのイメージや感想は間違っていなかったということが分かります。 この本はオランダ人のダニエルが軽い気持ちで入ったシリアで拘束され拷問を受け、そして解放されるまでの話です。 とにかく、ISISはカメラを持っていたというだけで、CIAのスパイだと決めつけ、イスラム教以外は認めず、執拗に拷問し、親族には身代金を要求し続けます。 身代金の減額や話し合いによる解決は全く効果がないと言うことがこの本を読んで分かりました。 生きるということ、普通に食事をすること、トイレに行くということ、話をすること、こういった当たり前の事が出来ない制限を受けた中で長期間の生活を強いられる人質という立場は非常に脆く、辛く、そして残酷なものです。 人質それぞれの国の考え方で、なんの罪もない人質の運命が決まってしまう残酷さ、辛さ。 この本の主人公のダニエルの国のオランダもテロリストととの金銭的な要求は断固拒否の立場なのですが、家族やコーディネーターの必死の努力で解放されます。 解放後も続く、心の病、人格変貌。。。。。。。 とにかく、冗談でも危険なところには近づかない事。 これは、狩猟民族の体質の方でもしっかりと頭に入れておいて欲しいと思います。 「私は後悔なく生きているから、いつ死んでも大丈夫」などといって決してシリアやイラク周辺には冗談でも近づかないで欲しい。 自分も周りの人間も辛い思いにさせるから。 農耕民族の自分に久々に安心感を覚えます。 若い方必読の1冊。
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