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しろくま先生のブログ
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2010年1月24日 (日)

美味しく食べるには自前の歯を大切に

本日は、NPO団体DOC(デンタルハイジニスト&オーラルヘルスセラピー協会)編著の『歯から始まる健康と医療』よりお届けいたします。

◇歯は表情や発音にも影響する

歯の役割は、食べると言うことだけではありません。キラリと光る白い歯は、美しい笑顔に欠かせませんし、歯をむき出しにして威嚇するという動物的な怒りの表現もあります。

魅力ある表情について考えてみましょう。

「明眸皓歯(めいぼうこうし)」という言葉があります。明るい瞳と口元の白い歯、これは中国で古くからの美人の要件です。この「美人」は、女性ばかりを対象にしているのではなく、美しい顔、美しい表情をいいます。我々の顔は社会の門戸として演じているわけです。

顔が利くという言葉も普段よくつかうでしょう。ほかにも、目は口ほどにものをいう。目元千両、口元万両。これは目が千両役者なら、口元はそれに倍して演ずることが多いということです。魅力ある表情には、口元は非常に大きな役割を果たしています。

昨今、日本歯科審美学会をはじめ、口元の美に関するいろいろな研究が学会として進んでいます。

次に、好感をもって相手に意思が伝えられるかどうかです。

アナウンサー、歌手、俳優の方々が、私どものところにいらっしゃいます。義歯を入れるようになって、皆さんが特に心配されるのは発音です。特にS音。「し」のS音が聞こえず、「い」が強く聞こえてしまうことがあるのです。

しばらく見ている患者さんで、国立劇場の舞台に立ている方ですが、「し」のS音がどうしても強くでない。この場合は、S音が出るように義歯の形態を変える必要があります。あるいは「がぎぐげご」がうまく発音できない。それは入れ歯の形態をなおせばおおかた治る発音です。

そういうことで、歯は食生活、あるいは審美、あるいは会話など、生きる上での基本的な喜びを与えてくれるものです。

◇健康は正しい噛み合わせから

最近は体のコントロールにも、噛み合わせが大きな影響を与えるということがわかってきました。

15年前にスポーツ歯学医学会が出来ましたが、全国の大学あるいは開業の先生方が参加されて、皆さんが歯を健康に保つことで、スポーツを楽しく、あるいは自分の体を上手にコントロールされてできるようにと研究しています。

数年前、ある射撃の選手が私の診察室にいらっしゃいました。近くの歯医者さんで臼歯の7番、一番奥の上の歯にインレーという詰め物をしたら、的が今までどおりうまく当たらない。どうも的を外す。的中率が悪くなったとおっしゃる。そこで、拝見して、数ミクロン、ほんのちょっと削りました。後日頂いた電話では、元にもどったということでした。正しい噛み合わせ、きちっと歯をあわすことが、全身の関節を固定する、姿勢をコントロールするのに非常に大事なのです。

また十数年前には、あるプロゴルファーが私の所にいらっしゃいました。臼歯が三カ所ほど噛み合わせが壊れていました。私もスポーツ歯学を始めて2年か3年からいたっていた頃だったと思います。9月に試合があるというので、2ヶ月くらいである意味で突貫工事でしたが、治療しました。するとなんとそれまで2年間トーナメントで優勝から離れていたのに、いきなり2連勝しました。

このように、噛み合わせは、全身の運動や、口元の美、発音と深く関わっているのです。

◇日本の食文化を楽しむために

これまでお話したことを簡単にまとめますと、味覚、嗅覚、見た目、これは世界の文化のいずれも大事にしていると思いますが、触覚、聴覚、音を大事にしているのは日本の食文化なのだということです。五つの感覚をフルに使って、我々日本人は日本の食文化の中で食を楽しんでいます。

食材を単味でそれと確かめ、料理そのものの特徴として記憶の中にとどめています。

日本人は複合味を感覚するのは不得手と言われますが、食材のひとつひとつの持ち味をおいしさと結びつける五つの感覚には鋭いものがあります。

日本の食文化は、繊細な食感覚を育て、精緻で豊富な擬音語、擬態語を生みました。言葉の文化にも大きな影響を与え、豊かな表現力を与えました。

デパートの地下街にならぶ焼き魚、天ぷらでは日本の食文化は語れません。地下街に山と盛られたきんぴらごぼうは圧力釜でどんと軟らかくして、後からきんぴらのたれで和えると聞きます。これでは歯ごたえなど味わえるはずもありません。

四季折々に魅せる旬の味、香り、彩り、それに歯ざわり、歯ごたえと音を一つ一つ確かめながら、季節の味、家庭の味として記憶し、生涯を通じて楽しめるのが日本の食文化であるはずです。

世界に類を見ない擬音語、擬態語を豊富にしかもひじょうに細かい精緻な表現、感覚表現を私たちは食文化の中で学び取って、日常生活で使っているわけです。そういう意味では、日本人こそ自前の歯を大事にしなければいけないと思います。

参考文献 『歯から始まる健康と医療』 NPO団体DOC(デンタルハイジニスト&オーラルヘルスセラピー協会)編著 九天社 

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