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2009年12月22日 (火)

咀嚼と学習能力

本日は、日本咀嚼学会編集 窪田金次郎先生監修の『誰も気づかなかった噛む効用~咀嚼のサイエンス~』よりお届けいたします。

◇食事・咀嚼と成績

最近の研究によりますと、食べ物をよく咀嚼すると、生きる意欲が増大し、記憶力まで向上することがわかってきました。

私たちの脳は、通常、睡眠状態と覚醒状態との間を行きつ戻りつしています。例えば、私たちはガム等を咀嚼すると、覚醒の程度が高くなり、頭がすっきりして、いわゆる「エネルギー覚醒の状態」になります。ラットやモルモットによる実験では、餌を咀嚼したあとで、脳の中の化学物質を測定してみると、コレシストキニンやFGFなどの記憶に関係する物質が増加していることがわかっています。

また別の動物実験ですが、ラットに、迷路を通り抜けて餌に到達するように「道順を記憶」させる実験をしましたら、餌をよく咀嚼して食べていたラットの方が、迷路を早く覚えることがわかりました。

迷路以外での「学習実験」でも同じような結果がでています。

アメリカの研究では、毎日きちんと朝食をとっている子どもと、朝食を取らないで学校へ来る子どもの成績を比較すると、朝食組の方が成績が良かったという報告があります。

スウェーデンの研究では、400キロカロリー以上の朝食を食べさせた児童のグループと、400キロカロリー以下の児童のグループの成績をやはり比較したそうです。結果は、高カロリーのグループの方が、成績が優れていたそうです。ですから、朝食時のカロリーも大切だということになります。

日本のある幼稚園で、56名の園児を二組に分けて、一方の組は、今まで通りのメニューの給食を続け、もう一方の組には、硬い食物のメニューを給食としました。そして六ヶ月後に「噛む力」と「記憶力」のテストを実施した結果、硬い給食組の方が噛む力が強く、記憶力テストの成績も良かったと報告されています。

◇噛む子はよく育つ

この研究をもう少し詳しく説明しましょう。普通食組(対照群)の園児24名の噛む力の平均は、最初22.6キログラムで、記憶力テストは7.9点でした。六ヶ月後の検査では、噛む力の平均は、24.6キログラムでしたから、2.1グラム増加しています。記憶力の方は平均8.5点で、0.6点高くなっています。

さて、一方、硬食組(実験群)の園児32名の、実験を始める前の噛む力は、平均21.7キログラムで、記憶テストは7.7点でした。両方とも普通食組とはほとんど差がありません。

ところが、硬いメニューの給食を六ヶ月食べた後の検査では、噛む力が27.7キログラムとなり、7キログラムも増加しました。また、記憶力テストも9.0点で。1.3点向上していました。この検査結果のみから一概に断定は出来ませんが、硬い食物を一定期間食べれることが、噛む力をアップさせるのみならず、さらに記憶力もアップさせる可能性を予測させます。

◇脳の発達とは?

さて、前に述べてきましたラットの実験や、アメリカ・スウェーデンでの研究報告、そして日本の幼稚園での検査結果などをまとめてみましょう。

子どもの「頭のよい・悪い」はいったいどこで分かれるのでしょうか。もちろん、親の遺伝子によってそれは決定される、という意見もあります。私たちは、その遺伝子決定説を全く否定するわけではありません。しかし、「脳の発育」を考える場合、生後の環境をよく考慮に入れる必要があると思います。

生後の環境というのは、前述のカロリーの調査のように、栄養の問題もあります。と同時に、どれだけ適切な「刺激」が、脳に与えられるかということも重要になってきます。

アヒルやカモなどのヒナは、孵化すると親鳥の後をついて行きます。これは先天的に(遺伝子によって)決定されている行動だとこれまで考えられていました。

ところが、生後すぐのヒナが、孵化を見守ったヒトの後をついて行くことが発見されました。じつはヒナは、生後すぐに(9時間から17時間内に)見たもの(ヒトでも機械でもいい)を(親と思って)ついて歩く・・・・・ということがわかったのです。

生後ある一定の時期に経験したこと(この場合は「見た」こと)は、脳のある特定の部分に刻印され、それがこのヒナの知能となり、その後の行動を支配することになる・・・これは私たち人間でも同じです。

このように、私たち(動物)の行動学習にとって、脳の発達段階における環境とそこから受ける刺激は、非常に重要なのです。

◇脳の発育と刺激

さて前述の「頭のよい・悪い」です。生命がこの世に誕生して、どのような脳細胞を、どれだけ造るかは、遺伝子の中に組み込まれたプログラムによって決定されます。遺伝子の中に組み込まれたプログラムによって決定されます。遺伝子には生命体のハードの情報があるのです。

しかし、脳細胞に、どのようなシナプス(脳細胞同士の連絡)を造らせるかは、外部からの刺激、すなわち環境によって決定されるのです。いわばソフトの情報は、外部からの学習によるのです。ですから、特に幼児期の環境というのは、きわめて大切なわけです。

これもアメリカでのラットの実験です。離乳直後のラットを二種類のケースで育てました。一つは、一匹づつ隔離して、刺激の少ないゲージで育てた場合です。もう一つは、数匹一緒に、しかも回転車やハシゴなどの道具を入れてある、刺激の多いゲージで育てた場合です。もうおわかりのように、後者のケースのラットの方が、脳の発育がよく、迷路学習でも成績がよかたのです。

さて、このような結果を踏まえながら、咀嚼という行為を考えてみましょう。幼児の生活の中で、非常に大きな比重を占めるものの一つが「食べる」という行動です。幼児のしつけは、きちんと食べる習慣から始めるといわれています。じつはこの「食べる」ということ、また咀嚼することが脳に大きな影響を与えるようです。

第一には、栄養の問題です。栄養だけを考えるなら、噛もうが噛むまいが、差は無いはずです。しかし実際はそうではないのです。

このことを考えるために、もう一度ラットの実験を取り上げます。

◇学習能力を向上さえるためには

同じ両親から生まれたラットを、生後三週間に離乳させ、二群に分けました。一方の仔ラットには、硬い固形の餌を与え、もう一方の仔ラットには、同じ成分の粉末の餌を与えて、5週間飼育します。

この結果、一方は、硬い固形食をしっかり咀嚼して成長した仔ラットです。またもう一方は、軟らかい粉末食をあまり噛まずに成長した仔ラットです。この二群に、迷路テストや条件回避学習を行わせました。これらの具体的な実験内容に関しては、また機会を改めて説明しますがから、今回本書では省きますが、結果的には、固形食のラットの方が、学習能力は優れていたのです。

よく咀嚼すると、脳細胞の代謝活動を盛んにさせ、脳の血液循環をよくするようです。このFGFには、記憶力を増進させて学習能力を向上させる働きがあるのです。

人間とラットを同一線上で述べることは出来ないでしょうから、結論を急ぐのは危険なのですが、咀嚼という行動が、脳の活動に何らかの影響を及ぼすことは、どうやら本当のようです。

よく噛むことが、頭を良くするようです。

参考文献 誰も気づかなかった噛む効用~咀嚼のサイエンス~ 日本咀嚼学会編集 窪田金次郎監修 朝日大学学長・船越正也テキスト分掲載 日本教文社 

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