噛み合わせと体のバランス2
昨日の続きです。
●歯ぎしりは体に悪いか?
歯ぎしりを聞くと、周りの人に迷惑を掛けたり、歯や体に割るそうという“悪”のイメージしか沸いてこないのではないでしょうか。
そのため、歯ぎしりの治療方法としては、自己暗示や噛み合わせ治療で、歯ぎしりを止めさせることがいい方法だと考えられていました。
しかし、今では、歯ぎしりはストレスの発散として重要な役割があるので、それを正しい環境で行わせれば良いと考えるようになりました。しかし、噛み合わせの悪い人がする歯ぎしりや食いしばりは、歯・歯周組織・顎関節・筋肉などへ、想像以上の負担をかけています。それは、自律神経系にも多大な悪影響を与え、死にもつながる可能性のある、睡眠時無呼吸症候群とも関係があるのです。
すなわち、噛み合わせの悪い人がする歯ぎしりは、ストレス発散のメリット以上に、多くの組織を破壊しようとするデメリットの方が多くなっています。
具体的にいえば、悪い噛み合わせの歯ぎしりや食いしばりは、筋肉に不自然な運動を強要するので、筋肉が異常に緊張し、血流が悪くなり、筋肉性の頭痛や首のこり、肩の懲り、肩こりなどが生じます。
また、噛み合わせが悪いと、特定の歯だけがすり減り、歯が折れたり、歯の根元が欠けて、知覚過敏なったり、歯がすり減らずに歯周組織が破壊され、歯がぐらぐらしてきたり、歯が動いたりします。
これらのマイナス作用をおこさないようにするためには、下顎が自然な自然な一定の動きを維持し、左右に動かしたときにも奥歯が当たらないような、理想的な噛み合わせを作らないといけないのです。
ただし、子供が乳歯の時期にする歯ぎしりは、下顎の成長発育にとって、大切な役割を持っているので、歯ぎしり自体は正常なことであって、一切心配する必要はありません。
●噛みやすさに左右の差があるのは問題
右利き、左利きという言葉があるように、腕や手、足などは、使いやすさに左右差があるのが普通です。左右のどちらかが噛みやすいというのは、何らかの問題があります。
右が噛みやすいのは、顎を左に動かそうとするときに、どこかの箇所の歯が顎を左に動かすのを邪魔しています。邪魔している原因の歯がその位置に存在する限り、無理に左側で噛もうとしても、顎の筋肉がとても疲れやすくなったり、筋肉の動きがおかしくなって、よく間違って頬を噛んでしまいます。
腕や手足は、右側だけというように、別々に動かすことができますが、顎の場合には左右が同時に動くので、左右の噛みやすさに差があるとすれば、それは歯の位置関係自体に問題があるのであって、正しい噛み合わせが作り出せれば、必ず左右両方で同じように噛めるようになります。
●人間の進化が作り出した悪い歯並び
悪い噛み合わせにも色々ありますが、最近特に増えているのが、奥歯で噛んでも前歯が閉じない「オープンバイト(開咬)」というのがあります。
この“開咬”という、奥歯で噛んでも前歯が閉じない咬み合わせが、なぜ増えてきているのでしょうか?
人間の歯には、前歯、小臼歯、大臼歯と、いろいろな形態の歯がありますが、それぞれに大切な働きがあるのにも関わらず、食べ物の軟化によって、すべての歯を使わなくても食事出来るようになってしまったという悪い影響で開咬が増えているように考えられています。
硬いものを噛まなくなったために、前歯を使って食べ物をかみ切る必要性が減ってきて、その結果前歯を使う筋肉が未発達のままになります。下顎の前方への回転が十分におこなわれない成長になり、間違った噛み合わせのままで成長が止まってしまうのです。
肉食動物では、人間の犬歯(前から三番目の歯)のような、先端の尖った歯がズラッと並び、肉を食いちぎるのに都合の良いようになっていますし、草食動物では、人間の大臼歯(一番奥の大きい歯)のような、臼のような歯が並んで、草などをすりつぶすのに都合のいいようになっています。
それに、顎の動きも肉食動物では上下に噛むことで、鋭い歯によって固い肉を引きちぎるのに都合の良い動きをしますし、草食動物では顎を左右に動かし、臼のような歯で、草などをすりつぶすのに都合のよい動きをします。
そのため、歯の形も顎の動きも、自然に長い時間をかけて、それぞれの食べ物が食べやすい形態に進化してきました。
人間も同様に、肉でも野菜でも食べるために、それらが食べられる歯の形態が作りだされてきたのです。
参考文献 よくわかる家庭の歯学 青山健一著 桐書房
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