手のひら手帳
治療を行う前に必ず患者さんに言う一言があります。
『痛いときは左手を挙げてください』
まだ歯科医師に成り立ての頃、治療に夢中になって、患者さんが左手を挙げているのを見逃したことがあるのです。
ひどく患者さんが立腹してしまい、大学病院だったため、患者さんの希望で医師の交代をさせられた苦い経験があります。
それ以来、患者さんの痛みの際のサインには敏感になってしまったのです。
そのため、患者さんの左の手はずっと観察する癖がついてしまったのです。
そこには、少なからず発見があります。
きれいに手入れされた手、家族を支えているお父さんの手、ネイルアートが眩しい手、力仕事をしてきた手等々。
また、何人かは手帳として使っている患者さんもいます。手の甲の部分にいろいろとボールペンで何か書いてあります。しかし、その大半はにじんで文字が読めなくなっている文字ばかりなのです。
そんなとき、画期的な文字を書いている若い女性の患者さん(しかもかなりお綺麗です)がいました。なんと赤のマジックで
『しろくま』
と手のひらに書いてありました。きれいな女性の患者さんが手のひらに“しろくま”って書いてあるギャップにほほえましくなりましたし、私の歯科医院に対する思いが私に伝わってうれしくなしました。
マジックで赤なら絶対にじまないし、忘れませんよね。
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