十一面観音のお顔
本日は、日本歯科医師会が発行している広報誌の中から、コラムをお伝えいたします。
以前もお伝えしたのですが、高野山大学教授である村上保壽さんのコラムです。
仏様は、いつも慈悲に満ちた表情で微笑しておられます。飛鳥時代の仏像の微笑を「アルカイック(古拙)の微笑」と言うように、経典や時代によってその微笑の表現は異なりますが、とにかく微笑し慈悲を表現している仏像は、人の心をなごませ癒す力をもっています。
ところが、そんな仏像が口を開け、上下に並んだ歯を見せて、薄暗いお堂の中でろうそくの明かりに照らされて、こちらを静かに見ていたとしたらどうでしょうか。ありがたく癒される気持ちにはとてもなれないでしょうか。
それどころか、そのような表情で見つめている仏像を想像するだけでも、なにかぞっとする気持ちになりませんか。二牙の明王でも恐ろしいのに、気持ち悪いと言うか、怖いというか、とても手を合わせてお祈りをする気持ちにはなれません。
ところが、慈悲を代表する仏様でありながら、口を開けて歯を見せている仏像があるのです。どんな仏様だと思いますか?実はある菩薩像です。
菩薩という仏様は、あらゆる衆生、つまり人々や動物たちの苦しみを取り去り(抜き)、楽を与えることを約束しているのです。
その菩薩の中に、十一面観音という菩薩がいます。頭の上に十面(顔)を載せている仏様をご覧になったことがあると思います。
頭上の十面のうち九面は、正面や側面から見ることができますが、後部の一面は背後に回らないと見ることができません。
この一面を「大笑面」と呼んでいます。それも他の九面よりも大きな顔で、上下の歯を見せて、口を大きく開けて笑っています。
じっと見ていますとすこし怖い感じがしますが、自分で自分に苦しみ、悩み、迷っている我々の心の動きを笑い飛ばしているかのようです。
実は、このお顔こそがこの観音様の隠されたメッセージなのです。
写真は奈良国立博物館のHPより転用いたしました。
十一面観音は大好きな仏像です
しかし背部の一面のことは知りませんでした。
今度は後ろを見ます。
渡岸寺(滋賀)、室生寺(京都),聖林寺(奈良)の
十一面観音は有名でおすすめ。・・合掌。