DV(ドメスティック・バイオレンス)による顔面損傷に特徴的なパターン
今回は、デンタルトリビューン紙2009年5月号よりお届けいたします。
★DVによる顔面損傷に特徴的なパターン
(米国)テンプル大学准教授のOneida A .Arosarena氏らは「親しい関係にあるパートナーからの暴力で外傷を負った女性は、別の理由で外傷を負った女性とは顔面損傷のパターンが異なる傾向にある」とArchives of Facial Plastic Surgery(2009;11:48-52)に発表しました。
◇多い眼窩吹き抜け骨折と頭蓋内損傷
Arosarena氏らによると、米国女性の約25~33%が、配偶者など親しい関係にあるパートナーから虐待を受けている。
このような被害者の88~94%が頭部および頸部の損傷のため治療を受け、このうち56%に顔面骨折が認められます。
同氏らは「女性の顔面損傷の34~73%は、親しいパートナーからの暴力によるものであるため、顎顔面損傷を治療する顔面形成外科医などの医療提供者には、このような被害者を同定し、地域のドメスティック・バイオレンス(DV)サービスプログラムに紹介するという重要な役割が求められている」と説明しています。
同氏らは、1998~2004年にケンタッキー大学医療センターで顔面外傷の治療を受けた女性326人(平均年齢35歳)の診療記録および歯科診療記録を検討しました。暴行による外傷患者45人(13.8%)のうち、19人が親しいパートナーまたは家族が加害者で残りの26人中24人は加害者が特定出来ませんでした。
★社会的介入への一助に
総じて、暴行を受けた患者では、下顎骨折、頬骨複雑骨折、眼窩吹き抜け骨折(眼の周囲の骨の亀裂または骨折)、頭蓋内損傷が多い傾向にありました。
また親しいパートナーによる暴力被害者では、傷害を受けてから受診までに平均12.6日を要し、受診が遅れる傾向にありました。Arosarena氏らは「親しいパートナーからの暴力の報告が少ないことが、多くの被害者への適切な社会的介入の妨げと成っている。我々の研究は、顔面外傷のある被害者に限定したものであるが、損傷のパターンのほか、受診のパターンをすべてスクリーニングし検討すれば、医療専門家がこのような患者を特定し、適切な医療行為および社会的介入を開始するための一助となりうることを示している」と述べています。
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