咳は口に・・・なぜ?
本日は、松矢・古郷両先生の著書「のどちんこの話」よりお届けいたします。
咳(せき)は「くしゃみ」ほどすっきりした気分になりません。
風邪を引いて「ゴホンゴホン」と連続して出るものから、人前でわざとらしい空咳もあります。
一般に咳は気管・気管支または咽頭などの粘膜への刺激により、反射的に起こるものです。咳はくしゃみのように短く痙攣的に息を吸うことはなく、突然「ゴホン」と出たり、あるいは連続した咳では大きく息を吸って「ゴホンゴホン」とやっています。
ところで、口をしっかり閉じて咳をしようと思うと、なかなか大変です。普通は口を閉じては咳は出ません。しかし、不思議に思うのは、気管や気管支から放出された粘液や異物は、口から出ても鼻から出てもどちらからでも良いように思うのですが、なぜ口から出なければならないのかということでしょう。
気管・気管支あるいは咽頭の粘液や異物を排出させるためには、これらの部位での呼気のスピードが速くなければならないということは想像のつくことです。
そこで、声門を閉じて内肋間筋の収縮で声門下での呼気圧を上昇させ、一気に声門を解放して呼気を排出させているのが咳なのです。ですからすっきりしないときは、意識的に咳をして異物などを排出させることが出来るのです。
声門を閉じる筋肉は後筋以外の内咽頭筋の働きであって、これらの筋肉が働くと「くしゃみ」とは反対に「のどちんこ」が挙上させられる(促進する)のかというと、実はそのような反射作用は存在しないのです。
犬を用いた実験で、声帯を閉じる筋肉が働かなくなっても、声門下圧(声門下での空気の圧力)が上昇すると「のどちんこ(軟口蓋)」が挙上するという反射が、脳幹を介して声門下粘膜の圧力センサーと軟口蓋との間に存在することが明らかになっています。
すなわち、咳では「のどちんこ」から鼻への通路を遮断した状態で、口にのみ勢いよく呼気が出る仕掛けとなっているので、口を閉じて鼻では咳は出来ないのです。
ところで、咳では声門を十分に開大していないし、勢いよく呼気が通過するので、その際に「ゴホン」という声が出るのは仕方がないことで、下品でも何でもないことです。
参考文献 のどちんこの話 松矢篤三 古郷幹彦著 医歯薬出版
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