味覚を育て本物志向に
本日は、平成19年11月4日に福島民報に掲載されたミシュランの一つ星を獲得した中村勝弘さんの寄稿文です。
味覚を育て本物志向に
「飽食の時代」と言われて久しく、「食べる」ことへの関心は低下しています。しかし、このような時代だからこそ、本物の味を知り、正しい食習慣を身につける必要があるのです。
私たちは「食べ物に関する感謝の気持ちを自然に持ち、味覚を育てることが食育」と考え、十歳前後の子供達を対象にした活動を続けています。
フランス農務省から農事功労賞を受賞した料理や教育など各分野の専門家が集まった私たちの「フランス農事功労者協会(MOMAJ)は今年、東京ガスなどと協力して半年間、毎月一回の味覚教室を実施しました。
実はフランスは1970年代から国を挙げて子供に対する味覚教育に取り組んでおり、私たちはその第一人者であるジャク・ピュイゼ教授の手法を基本に、日本の風土に合わせたカリキュラムを作成しました。
具体的には私が先生になり、小学生に甘みや苦みをいった味覚や、加熱で素材の味がどのように変化するかなどを体験してもらいました。
さらに野菜や魚、肉などがどのような経路をたどって食卓に届くかなどを勉強したり、農場を見学し、その場で収穫した野菜を使って一緒にカレーを作ったりもしました。
とはいえ、今回はあくまでも試行であり、この経験を基に全国のMOMAJ会員が取り組めるようなテキストを作成する事を考えています。
食育には、栄養上のバランスに注目したり、肉や野菜がどのように作られるかを紹介したりするなど、さまざまな取り組み方があります。その中でも、味覚を磨き、正しい食習慣を体得することは非常に重要なポイントとなります。
しかし、偏食や過食など誤った食習慣を送っている人は少なくありません。これを防ぐには子供の頃から本物の味を知り、食習慣を含めた正しいマナーを身につけることが一番なのです。
例えば、さまざまな化学調味料を使ったり、素材の味を隠してしまうような濃い味付けは、刺激が強いだけに一度慣れ親しんでしまうと、なかなか抜けだすことは出来ません。
こうした味に慣れ親しむ前に、卵と酢だけで作ったマヨネーズや、季節ごとの素材の素晴らしい味を知ることが大切となります。
そしてその過程で、料理を作ってくれる人や食材そのものなどに対する感謝の心が自然に育ってくるはずです。もちろん、このような取り組みは私たち達でけでなく、家庭の参加が不可欠です。小さなころの体験は一生を左右します。そのことを忘れないでください。(MOMAJ食育担当理事)
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