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2009年3月 2日 (月)

食を通じた心の発達

本日は、巷野悟郎先生、向井美恵先生、今村榮一先生監修の『乳幼児の食行動と食支援』よりお届けいたします。

◇食を通して発達する心

子どもの心は、人とのやりとりを通して発達します。このやりとりのなかで重要な関わりの一つが食べること、食事です。一方、食べ方や食事場面での周りの人との交流の持ち方は、子どもの心の発達を反映しています。すなわち、食べることと心の発達は相互に関連しあっているのです。ところで食を通じて心のどのような所が発達するのでしょうか。いくつかあげると、愛情関係の発達、対人関係・社会性の発達、自我の発達、身体感覚の発達、感情発達、味覚・味わいの発達、食べ物との関係の持ち方、が考えられます。

もちろん、これらの発達は相互に重なっているところがあります。以下に乳幼児期から毎日の生活のなかで繰り返されている食べることや、食事のときの家族とのやりとりがどのように心の発達に関係しているのかについて述べ、心の発達の観点から食べることの意義を再確認します。

~食と心の発達~

◇愛情関係の発達

愛情関係とは、アタッチメント〔乳幼児期に形成される愛情関係(情緒的な深い結びつきのこと)〕を形成している人との間に愛情を感じること、そして相手に対して愛情を抱くことです。

アタッチメント理論を提唱したボウルビィは、アタッチメントの形成に食べることは関係ないとしました。しかし、一方では生物学的にみて、アタッチメントを形成することが、危険な動物や環境から身を守り、生命を維持するための食事を供給され、生き残るのに重要な役割を担っていることにも触れています。

また、彼はアタッチメントを形成するためのアタッチメント行動のなかに、乳房に吸い付くことを含めています。従って、食べることは、愛情関係の発達に決して軽視できないものと考えます。

①子どもと親の関係

乳児が母親に対してアタッチメントを形成するのは、生後半年を過ぎたころです。そのころになると、乳児は母親の不在に悲しみ、母親に出会えることに喜びをもつとともに、にこやかな表情で母親への愛情を表現します。それ以前の乳児は、母親からの愛情を受けて、母親の腕に抱かれて安心して哺乳しているのですが、このとき母親から愛情をもらっていることも、乳房が母親のものでもあることも認識できていないかもしれません。

3ヶ月くらいになると、乳児は母親の顔が分かるようになるとともに、哺乳中に乳房や母親の顔に触るなどして、乳房が母親のものであることを理解するようになります。この時期には、母親に心を寄せて、アタッチメント行動m活発化してくるので、乳児は、母親からの愛情を感じることと、母親に対する愛情を抱きしめることの両方が可能になると考えられます。

その後、6,7ヶ月ころに、乳児に対する母親の愛情と母親に対する乳児の愛情が明確になるのですが、その以前の3,4ヶ月ころから、食べ物をもらうことと母親の愛情との関係が認識されつつあるといえます。

なお、この3,4ヶ月の時期に、子どもの空腹を見極め、タイミング良く授乳する母親の感受性は、アタッチメントの形成にとても重要です。

その後、授乳は母親が食事をつくって食べさせることに移っていきますが、安心できる場所で、親が愛情を込めてつくった食事を、親と一緒に食べることが、子どもの愛情関係を発達させ、子どもの安心感を育てることになるのです。

このような、食べることと愛情関係の発達、食べることと愛情の確認は、子どもが成長しても続きます。例えば、親が子どもに与える食べ物の多少は、親の愛情の多少に関係すると考えられるので、子ども達は、食べ物の多さを競うのです。

②食事環境が愛情関係に与える影響~「弧食」の影響~

愛情を込めずに食べ物を与えることは、食を通じてなされる愛情関係の発達、安心感の形成の発達を妨げます。また、一人で食べさせる弧食も、一緒に食べることを通じて成される愛情関係の発達を妨げます。

足立(1983)は、夕食を一人で食べる子どもが小学5年生で約9%いるとともに、一人で食べている子どもの多くが食事を「つまらない」と感じていることを報告しました。また子ども達は、一人で食べている食事場面に絵を描いた際に、寂しさを表現していました。

足立ら(2000)はさらに、17年後にも小学校5,6年生を対象に調査を行っています。この調査では、夕食を一人で食べる子どもが約9%から約7%へとやや減少しているものの、その一方で、「ひとりで食べている時が一番楽しい」とする子どもが、朝食で約15.5%、夕食では8.2%いることが明らかにされました。このような子ども達は、愛情と食べることの関係を感じていないのかもしれません。

この弧食という状況は、親のやむを得ない事情によって生じてる場合と、親の子どもに対する愛情の不足によって生じている場合があるのかもしれませんが、弧食の多い中学生は、家族と食事をする機会が多い子どもに比べ、イライラする、気が散る、大声を出したい、不安になる、などの症状を感じることが多いことが確認されています。(小西、黒川、2001)

この報告を参考にすると、おそらく、一人で食べている小学生は、中学生よりもさらに心理的に満たされない思いが強く、より精神的に不安定であることが予想されます。

参考文献 乳幼児の食行動と食支援 巷野悟郎、向井美恵、今村榮一監修 医歯薬出版 

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