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2009年3月 6日 (金)

くしゃみは鼻に、なぜ

本日は、松矢篤三先生、古郷幹彦先生の著書『のどちんこの話し』よりお届けいたします。

◇くしゃみは鼻に、なぜ

若い女性の「クシャン」というちいさな「くしゃみ(嚔)」はいかいも可愛いのですが、むさ苦しい男がばかでかい「くしゃみ」の後で、「クソー」とか「オラー」とか無理に声を出しているのは誠に下品な仕草で、国際的にもひんしゅくを買うと思うのですが、いかがでしょうか。

「くしゃみ」とは鼻粘膜の刺激が脳幹の「くしゃみ」の中枢に働いて呼気が勢いよく排出される反射行為です。鼻粘膜の刺激以外にも、光刺激などで「くしゃみ」を催すことがありますが、一般に「くしゃみ」は鼻腔内の異物を排出させる反射運動です。人前で不意に「くしゃみ」が出てあわてて口や鼻を押さえることがありますが、出る前にこの反射を抑えることも出来ます。また、途中で出なくなって、スッキリしない思いが残るようなこともあるでしょう。

気持ちの良い「くしゃみ」は、一度あるいは二~三度短く息を吸った後、口を開き一気に「ハークション」となります。この時、肺から出た空気は鼻のみならず、口にも分かれて出ることが多いのです。したがって恥ずかしいことに、「くしゃみ」と同時に鼻水が出ることもあれば、たんまで飛んで出ることもあります。

咳は呼気が鼻から出ないのに、なぜ「くしゃみ」は鼻と口に振り分けられて出るのか。しかも十分に意識をしないうちに、鼻中心の「くしゃみ」と、多分に口に振り分けたような「くしゃみ」にすみ分けられることが出来ているのはなぜなのか。こんな疑問をもったこおてゃないでしょうか。次のような面白い仕掛けがあります。

鼻腔内の異物を排出させるために、「くしゃみ」では咽頭から鼻腔に至る呼気のスピードが当然早くなければなりません。呼気の通過する通路、すなわち気道で呼気に抵抗を与えているのは、声門と鼻咽腔です。そこで、声門と鼻咽腔が同時に開大する必要があります。

声門を広げる役目をするのは咽頭の後筋という筋肉ですが、この筋肉が働いているときは、この筋肉から脳幹への情報によって脳幹は、「のどちんこ」(軟口蓋)を下垂させ鼻腔への通路(鼻咽腔)を拡大するようにという命令が軟口蓋の運動核に伝えられ、鼻咽腔も閉鎖しない状態が保たれるようになっています。

これによって、「くしゃみ」では肺からの呼気が勢いよく鼻腔を通過することができるのです。

ところで、軟口蓋の下垂時に軟口蓋と咽頭蓋が重なり合って、口への通路が遮断されている動物では「くしゃみ」も呼気はすべて鼻にでることになります。しかし、人では軟口蓋が下垂している状態でも咽頭蓋との間には空隙があり、この部を舌の奥を使って完全に閉鎖しないと「くしゃみ」は口にも呼気が出ることになるのです。

「くしゃみ」の鼻と口への振り分けは舌の位置によるそうです。鼻に「こより」をいれて実感してみてはいかがでしょうか。

参考文献 のどちんこの話し  松矢篤三 古郷幹彦 著 医歯薬出版 

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