口臭に悩んでいる人ほど臭くない
本日は、西川義昌先生の「知っておきたい歯と口の健康学」よりお届けいたします。
口臭に悩んでいる人ほど口は臭くない
最近、“口臭外来”の看板を掲げる病院、歯科医院をちらほら見かけるようになりました。1999年の保険福祉動向調査では、日本人のほぼ7割が「歯や口の中の悩みや気になること」があると答えており、そのうち口臭を悩みにあげている人は14.5%(複数回答)で第4位となっています。すなわち、およそ7人に1人が口のにおいを気にしていることになります。
口臭の悩みをもつ人を、男女別に見ると、男性が15.8%、女性が13.2%で、男性の方がやや多く、年齢別に見ると、45~54歳が最も多く、次いで55~64歳となっています。
口臭を治療してほしいと歯科医院を訪れる人は、妻(夫)に口が臭いといわれた、孫にいやな顔をされたなど、他人に指摘されて口臭が気になり出したというケースがほとんどです。では、口臭は何が原因で発生するのでしょうか?
ひとくちに口臭といっても、発生原因や症状から大きく次の4つに分類されます。
- 生理的口臭・・・誰にでもある口臭。一日の生理的なサイクルや、心身の状態、加齢によるものなど。起床時口臭、空腹時口臭、緊張時口臭、老人性口臭
- 病的口臭・・・口腔内に原因があるものと全身的原因(呼吸器・消化器・耳鼻科領域など)によるものがある
- 食餌性口臭・・・食品による一時的な口臭。納豆やニンニク、アルコール、喫煙によるもの
- 心因性口臭・・・他人には全然臭わないのに、自分だけが口臭があると信じて悩む。自臭症あるいは口臭恐怖症ともいいます。
このうち、口臭治療の対象となるのは病気や不潔によって生じている口臭です。そして、その口臭の8~9割の原因は口腔内にあり、全身的なものはほとんどありません。
ニンニクを食べた後、いつまでもくさいにおいが残ることから、口臭が胃から来ていると信じている人も多いようですが、胃からガスが上がってくるのはゲップをしたときくらいで、あのニンニクくささは実際には口に残っている臭いです。
では、具体的に口の中のどこに臭いの発生源があるのかといえば、これまた一般に信じられてきたように歯垢や歯石ではなく、むしろ舌苔や舌の付け根当たりの部分です。舌苔とは、舌表面の糸状乳頭という上皮組織が毛のように伸び、そこに口腔粘膜がはがれたものや食物のカスがたまり、細菌が繁殖して、白っぽく苔が生えたように見えるものです。
歯垢と口臭では、関与する細菌の種類が違うことが指摘されています。口臭のにおいは、汗のにおいと同様、細菌が代謝(分解)した産物でどんな栄養素を代謝するかというと、主としてタンパク質を中心にした食物のカスや、後鼻漏(こうびろう)などの体液です。
もちろん、歯垢や歯石がまったくにおいを発しないということではありません。それに、口に残ったタンパク質の多くは糖と結合して糖タンパクの形で存在しており、その糖を歯垢を作る細菌が分解し、結果的にタンパク質分解細菌の活動を助けているからです。
口臭は、ただ一種類のいにおいではなく、何百種類もいる口腔細菌のどれかが作り出す多数の化合物が入り混じった混合臭です。悪臭の正体は、主なものだけでも、硫化水素(卵の腐臭)、メチルカプタン(糞便臭)、スカトール(糞便臭)、カダベリン(死臭)、プトレシン(肉の腐臭)、イソ吉草酸(足のむれたにおい)などがあげられます。これでは口臭がくさくないはずがありません。
ところが、著者の経験からいって、口臭に悩んでいるといって歯科医院を訪ねてくる人の口はそれほど臭いません。歯の治療に来ている患者さんのなかには、もっとひどい臭いを口から発散させている人がいるにもかかわらず、そうした人たちは口臭のことなどまったく気にもとめておらず、さわやかな息の人のほうが悩んでいるのです。軽い口臭恐怖症だといえるような状態です。
しかし、なぜ、口臭に悩んでいる人の息ににおいがないのでしょうか。それは、、その人達が口臭を気にして、常に歯を磨き、うがいをし、洗口剤を使うなどして、口の中を清潔にしているからです。
周囲の皆がにおわないといい、歯科医もそう断言しているにもかかわらず、それでも口臭が気になってしかたがないときは、神経科のカウンセリングを受けた方がよいケースもあります。
新潟大学予防歯科の調査では、口臭外来を訪れた人の4割に実際に病的口臭がみられたものの、半分以上の6割は誰にでもある生理的口臭を病的なものと誤解して来院したものだったといいます。そして4%の人が、精神的な面から治療が必要な口臭恐怖症と診断されたそうです。
ほとんどの口臭症は、口の衛生管理にきを配ればよくなります。
参考文献 知っておきたい歯と口の健康学 西川義昌著 山海堂
はじめてブログを読ませて貰いました。
確かに自臭症の人は多いですよね。
参考になりました。
また遊びにきます。