歯周病の原因説1
今回は、2回に分けて、野田先生の著書『歯周病で死ぬのはイヤだ!』よりお届けいたします。
◇歯周病の原因説
歯石という言葉を聞いたことがない方は少ないでしょう。歯石は歯についた石灰質の石の事で、鍾乳石のような石灰質の沈着物と考えるとわかりやすいと思います。
つまり、歯石というのはもともと人の唾液中の石灰分であり、食べ物に含まれる石灰分であるわけです。
それが歯と歯肉との境目あたりに付着します。歯肉の上に見えている歯石はよく歯磨きをすれば取れますが、歯肉に隠れた場所に付着すると、ブラシが届かずに取り除くことが出来ません。そして、この隠れた歯石が、歯周病に関係していると考えられています。
歯周病の原因説としては、この歯石説がもっとも古いのです。
その歴史はなんと古代ギリシャ時代にまで遡り、ヒポクラテスが歯周病は歯石が原因だ、と述べています。
また、現代でも、歯科医の河田克之先生は、きわめつけの悪を働くのが歯石だ、と述べています。
つまり、歯石は「棘」と同じで、棘が刺さった場合、生体はそれを異物として取り除こうとします。自然に取れない場合、痛みにくわえて、まわりが膿んで腐ってきます。生体は周囲を腐らせても異物を排除しようとし、結果、歯肉が膿んで口臭が酷くなる、と考えているそうです。
歯周病の原因に関しては、未だに意見が分かれています。その理由としましては、歯周病の研究の歴史が浅いことは既に述べました。くわえて言うと、歯周病を専門に扱う大学の講座が誕生したのが、戦後の1957年(昭和31年)4月です。東京医科歯科大学に「歯科保存学第二講座(歯周治療学)が開設されました。この初代教授が、大阪大学から着任した今川先生でした。
そのて、そのころの治療法は、原点というべき歯石の除去が中心でした。歯周病の原因が歯石であると考えられていたためですが、今のような超音波スケーラーはなく、ハンドスケーラーと呼ばれる小さな鎌状の刃物で歯石の除去が行われてました。
1968年になると、今川先生が定年退職されて、その門下生である木下四郎先生が後任教授となりました。木下先生は、歯周病学の研究に精力的に取り組み、大きな成果をあげました。
つまり、「プラーク(歯垢)コントロール」が歯周疾患の予防と治療に大きな効果があることを突き止めて、その方法の確立に力を注ぎました。そして、日本歯周病学会理事長として、「歯周病疾患治療指針」を完成しました。
1970年以降、木下説にそって、歯周病には「細菌」が深く関わっているという考え方が有力になります。プラークは細菌の塊ですから、それを除去する術、すなわち歯磨きと細菌の感受性のある抗生物質が脚光を浴びるわけです。
明日へ続きます。
参考文献 歯周病で死ぬのはイヤだ! 野田隆夫 野田雅代著 光人社
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