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2009年6月30日 (火)

見た目で判断することのリスク

本日は、デンタルトリビューン紙2009年6月号の高橋美保先生の『歯科のココロ 患者ココロ』よりお届けいたします。

◇見た目で判断することのリスク

「この人はきっとこういう人」

人は見た目が9割・・・・ではないが(実際9割という数字に科学的根拠はない)、私たちは自分でも気付かないうちに人を見た目やイメージで評価している。

患者がへの字口をした高齢男性なら「頑固そう」と判断した経験はないだろうか。こうした、典型的な型に当てはめる人の見方を「ステレオタイプ」、あるいは、より広い概念として「暗黙の性格観」という。

言い換えれば、ステレオタイプとはわれわれが社会生活のなかで身につけた「あるカテゴリーに属する人に典型的な態度や行動に属する知識」である。

ステレオタイプの利点は、例えば初診患者であっても、外見や職業など少ない情報を手がかりにどんな人かを想定し、相手とのやりとりをスムーズに進められる場合などである。

◇その思い込み、凶暴につき

もちろん、欠点もある。ステレオタイプ的な思い込みによって、個人の固有性を軽視してしまうという点である

初診患者が“くたびれた服を着た高齢女性”であることから、歯科医師やスタッフが「老齢のまずしそうな女性→理解力や動機づけが低そう」と乱暴に判断し、説明を簡素にすませてしまうような場合である。

その患者が外見とは別に高い教養と治療意欲を持っていた場合、「あのクリニックは説明をおざなり」と謗りを受けることにもなりかねない。

ステレオタイプ的な判断が不正確な評価に結びつくことを示した実験がある。被験者に小学生女児の日常場面や学習場面の映像を見せ、学力を推定させる実験である。被験者は、日常場面の映像で女児の家庭が「貧困家庭(低学力予想)として描写されるか、また、見る映像が「日常場面のみ」か「日常場面+学習場面」かで、2×2の4群に分けられた。各群に映像中の女児の学力を推定させた結果、「日常場面のみ」を視聴した2群ではその値にほぼ差がなかった。

“ステレオタイプの呪縛は強い”

ところが、「日常場面+学習場面」の2群は、同じ学習場面を視聴したにもかかわらず「貧困家庭(低学力予想期)」群よりも「中産階級(高学力予想)」群が有意に女児の学力を高く推定していた。

さらに後の調査によって、前者の群は学習場面の映像によって女児の間違える場面ばかりに注目し、後者の群では正解を答える場面ばかりに注目していることが明らかとなった。

つまり、日常場面ばかりに注目していたことが明らかとなた。つまり、日常場面の映像で〈貧困家庭→低学力〉、〈中産階級→高学歴〉というステレオタイプが被験者に働き、その予断を裏付けるような点を裏付けるような点に注目して視聴したために、学力の判断に差がでたのである。

注目すべきは、①ステレオタイプに基づく判断は自分で気がつかないほど自動的・無意識的に行っているため、修正の機会が少ない点②ステレオタイプに合致しない情報は「例外ととらえられる点である。われわれは普段出会う相手に対して、外見や職業、出身地、ときに血液型さえふくめ、ほぼ自動的にステレオタイプ的な認知や判断を行っている。冒頭で述べたように利点もあるが、「人を見た目で判断する」ことのリスクにも常に自覚的でありたい。

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