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2009年6月20日 (土)

むし歯は文明病である。

本日は花田信弘先生の著書『もう虫歯にならない』よりお届けいたします。

◇虫歯は文明病である◇

今から7万年前、ネアンデルタール人の時代、人々は狩猟生活をしていました。彼らの歯には虫歯がありませんでした。虫歯が登場するのは、今から約1万年前、農耕を始めてたころからです。つまり、穀物を栽培してそれを主食にするようになってからです。

動物に含まれている糖はグルコース(ブドウ糖)ですが、すべての植物にはスクロース(しょ糖=ブドウ糖と果糖からなる2種類)が入っています。

すべての植物が体内に蓄えている重要な栄養素であるスクロースを、常時摂取することになって虫歯が登場するのです。

ただしこの頃の虫歯はエナメル質の虫歯ではなく、歯根部の虫歯でした。大人の歯の噛み合わせ面や子どもの歯にはなく、虫歯は老人の病気でした。縄文時代の人骨からも虫歯の痕跡を見ることが出来ます。歯根部の虫歯を作り出す歯周病に、人類は長い間悩まされてきたのです。

そして、長い歴史の中でミュータンス菌が登場してきました。この菌は狩猟生活をしていたネアンデルタール人のことにはいなかったと考えられます。ミュータンス菌が登場したのは、やはり約1万年前に、人々が安住し穀物栽培を開始して、穀物を主食にするようになってからのことだろうと推測されます。

その後、砂糖が精製されるようになり、あらゆる食品の中に高濃度の砂糖が含まれるようになりました。そして、いっきに子どもの虫歯が増えてきました。文明の発達とともに虫歯は広がっていったといえるのです。

また、穀物を栽培するようになってから起きた問題があります。それは土壌の中に含まれるフッ素濃度です。本来自然の土壌には280ppm(百万分のいくつかを表す単位)ものフッ素が含まれています。しかし、繰り返し同じ土を使って植物を栽培するうちに、土のフッ素濃度が下がってしまいミネラルバランスが崩れてきていると考えられます。

海の水には1.3ppmのフッ素が含まれていますが、川の水にはほとんどフッ素が含まれていません。縄文時代の陸稲にとってかわり、弥生時代に川の水を導入した水稲栽培がおこなわるようになってから、どんどんフッ素などのミネラル濃度が下がってきたと思われます。土のフッ素濃度が下がるということは、そこからとれる作物のフッ素含有量が減るということです。実際に縄文人よりも弥生人のほうに虫歯が多いことが分かっています。

同様のことはミイラの歯のフッ素濃度を測定した外国の研究でも明かになっています。歯のフッ素濃度が高いミイラには虫歯が少ないのです。

作物がよく育つようにと考えて土に肥料がくわえられるのに、その作物を食べる人間のことを考えて土作りがなされないというのはどういうことでしょうか。大問題となった「肉骨粉」なども、牛の成長のことは考えたのに、それを食べる人間のことは考えていなかったために起きた問題です。

より自然な形でフッ素などのミネラルを摂取できるように農作物の肥料にミネラルを添加するといった生産農家への指導が必要だと思います。

縄文や弥生の時代から続けてきた人工的な植物栽培が、人体にどのような影響を与えているかを、科学的に検討しなおす時期にきています。

参考文献 もう虫歯にならない 花田信弘著 新潮文庫

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