食の乱れが朝食に現れる~日本とアメリカの現状~
本日は丸森英史先生、武内博朗先生編著の『“食育”は歯科医療を変える』よりお届けいたします。
★健全な食生活は齲蝕になりにくい
アメリカで行われた調査ですが、健全な食生活(朝食を毎日食べる。または1日に5種類以上の野菜・果物を摂取する)をしている幼児は、齲蝕になりにくいことが報告されています。
朝食を十分摂ることで、スナック菓子などの甘いものをとる機会が少なくなることが考えられています。平成17年国民健康・栄養調査では男女とも「毎日たべる」との回答は90%以上で横ばい状態です。でも朝食の弧食化が目立つようになってきています。夜更かしや、運動不足が影響を与えているようです。
富山で行われたコホート研究で中学3年生の食事調査が行われています。
富山スタディは、1989年4月2日~1990年4月1日に富山県で出生した集団を対象に、社会環境や生活習慣と小児の健康について調査している多施設共同研究です。
朝食の欠食や不規則な間食、運動不足・運動嫌い、夜更かし・睡眠不足が小児肥満と関連することを明らかにしてきました。
糖質、米飯摂取量の観点から食事内容を検討すると、米飯の摂取量が多いとほかの食品群の摂取も増えています。しかし糖質が多い群では米飯摂取が少ないと砂糖などの単純糖質が多くなり、主食に菓子パンを選択している生徒が多く認められました。糖質や米飯の摂取が少ない時には、ダイエットを目的にした食事傾向がみられタンパク質、鉄、カルシウムの摂取不足もみられたと報告されています。「不健康なやせ」もこれらの問題のようです。
子どもの生活習慣とむし歯の関連を調べた研究があります。(本間達、若松秀俊:日本健康科学学会、Health Science.vol19 no2 2003-135)。その中でむし歯が多い子どもほど食事が不規則になる傾向や、テレビを見る時間も長いことが示され、むし歯と食生活を含む生活に影響されることを見いだしてみます。
Marshall TAらは、過体重のリスクを持つ子供達にはむし歯になりやすい傾向を見いだしています(Community Dent Oral Epidemiol.2007 Dec;vol35 no.6449-58)。とくに貧困層であh肥満と虫歯のリスクが共通していることがみられました。
むし歯が出来る生活習慣の背景が、むし歯だけでなく、多くの生活習慣病の共通因子になっている様子がうかがい知れます。
先進国でも子ども達の多くは脂肪分、糖分、塩分およびカロリーを採りすぎており、それは将来の生活習慣病に結びつくのです。必要栄養素の少ない偏った食生活になりやすいのです。むし歯予防にまで影響を持っています。このことは、幼児の親・養育者・政策決定者に対して、幼児の健全な食生活を促す歯科医保険教育が必要なことを示しています。
参考文献 『“食育”は歯科医療を変える』 丸森英史・武内博朗編著 クインテッセンス出版株式会社
東京医科歯科大学の研究グループです。
サイトを偶然に見ました。20年ほど前に全国1万人について行った子供の食習慣の結果です。下記参考にしていただければ幸いです。保健衛生学研究科 教授 若松秀俊
若松秀俊, 大町明香:食品および食習慣の子供の健康に及ぼす影響に関する調査, 日本健康科学学会誌Health Sciences, 18(2):127-138 (2002).
若松秀俊, 倉上洋行, 大町明香:食卓の雰囲気と子どもの積極性, 日本健康科学学会誌, Health Sciences, 18(3):169-177 (2002).
倉上洋行, 若松秀俊:糖質摂取と子どもの主観的症状に関する検討, 日本健康科学学会誌Health Sciences, 18(2):141-149 (2002).
倉上洋行, 若松秀俊:保護者の栄養バランスに対する関心と小中学生の食品摂取傾向, 日本健康科学学会誌Health Sciences, 19(2):112-121(2003).
本間 達, 若松秀俊:子供の生活習慣と虫歯の関連, 日本健康科学学会誌Health Sciences, 19(2),127-135 (2003).
倉上洋行, 若松秀俊:保護者の養育態度と小中学生の精神的不調との関連研究, 日本健康科学学会誌Health Sciences, 19(1):58-65(2003).
若松秀俊, 檮木智彦:子供の食事や栄養に対する保護者の関心を対象変数とした属性の交絡性, 日本健康科学学会誌Health Sciences, 19(1),115-124(2003).
檮木智彦, 若松秀俊:子供の食事や栄養に対する保護者の関心のあり方とその背景の検討, 日本健康科学学会誌Health Sciences, 20(1), 115-124(2004).
倉上洋行, 若松秀俊:小中学生の食品摂取と「いらいら感」との関連研究, 日本健康科学学会誌Health Sciences, 20(1), 41-51 (2004).
若松秀俊, 本間 達:多項目の自動解析による子供の生活習慣と風邪の相互影響の評価, 日本健康科学学会誌 Health Science, Vol.20, No.3, 284-297 (2004).
子供と健康に関する調査データ
http://www.tmd.ac.jp/med/mtec/wakamatsu/research/kenkoukagaku/index.htm
日本健康科学学会「子供と健康」分科会
http://www.tmd.ac.jp/med/mtec/wakamatsu/research//kenkoukagaku/health/kenkoukagaku.htm
http://www.tmd.ac.jp/med/mtec/wakamatsu/