歯科金属アレルギーで、何が起こる?
昨日の続きです。本日も吉川先生の著書よりお届けいたします。
☆アマルガムは消えていくのか・・・・・☆
有機水銀中毒による水俣病のことは、読者の皆さんもよくご存じのことと思います。では、なぜ水銀を含むアマルガムという合金が、歯科金属として使われているのでしょうか。
これは、アマルガムに含まれる水銀は無機水銀だから安全だ、と考えられているからなのです。
実際、100年以上の歴史を持つアマルガム合金に対してはアメリカ歯科医師会、日本歯科医師会、厚生労働省が安全宣言を出していて、これを使用することは現在も歯科医療で選択される一つの方法として認められています。
もちろん、最近ではいろいろな歯科材料が普及してきましたので、審美的にも強度としても、アマルガムよりすぐれたものが使用されることが多くなってきました。しかし、かつてアマルガムはとてもよく使われていたのです。
歯科金属アレルギーの問題が「グレーゾーン」で問題になっているいま、「疑わしきは使用せず」の姿勢で、アマルガムを使用しない歯科臨床医も増えてきています。新しく治療する患者さんは、気になるようであれば、歯科金属の材料について積極的に質問するようにするとよいと思います。
アマルガムがアトピー性皮膚炎を起こす、あるいは本書(実際の参考文献で参照してください)の冒頭で紹介したアメリカの事例のように、神経に機能的な問題を引きおこすということは、実証できていません。しかし、アマルガムは自然淘汰されていく運命にあるようです。
歯科金属については、このようにきわめてゆっくりとした変化が、いま起こっているところなのではないかと考えられます。
〔症例 歯の治療直後、突然顔に湿疹ができはじめた)
Cさんは57歳の女性です。会う人ごとに「きれいなお肌をしていますね」といわれるほど、色白できれいな女性でした。
ところが、近所の歯科医院で治療を受けた後から、急に顔に湿疹が出来はじめました。きれいな肌は見る見るボロボロになっていったそうです。治療を受けた歯科医に相談したところ、「金属アレルギーかもしれない」といわれ、居住地の市民病院の皮膚科を紹介されました。
Cさんは、皮膚科を受診して金属アレルギーかどうか調べてもらおうと思いました。ところが、検査は拒否されました。Cさんが「検査して欲しい」とお願いしているのにも関わらず、医師は「あなたのこの症状は、絶対に金属アレルギーではない。自分の長年の経験からいって、そんなことは絶対にあり得ない」といわれ、パッチテストすらもしてもらえなかったそうです。
同じ病院の歯科口腔外科でも相談しましたが、やはりその歯科医にも「金属アレルギーではないと思う」といわれたそうです。困ったCさんは、インターネットで歯科金属アレルギーについて調べ、当院のホームページを見て受診したのです。
早速パッチテストをして見たところ、17種類の金属のうち白金、クロム、亜鉛、マンガンの4種類の金属アレルギー反応が現れました。明らかに金属アレルギーです。
亜鉛は、現在Cさんの口の中に入っているすべての詰め物に含まれている金属元素です。そこで、口の中の金属をすべて除去することにしました。メタルフリーの治療を行ったのです。
そして15ヶ月後。Cさんの顔からは湿疹は消え失せ、もとのきれいな肌に戻ったのです。治癒まで15ヶ月もかかったのは、おそらくCさんの新陳代謝が良くなかったからだと考えられます。真夏でもほとんど汗をかかないので、体内に溜まった金属イオンが排出(解毒)されるまでに、時間がかかったのだと思われます。
なお、この間、Cさんは皮膚科的治療は一切行っていませんでした。
皮膚科の先生がおっしゃったという根拠はわかりませんが、当院での治療の経過と結果を見れば、明らかに歯科金属アレルギーによる湿疹と考えられます。
このケースのように、長期にわたって慢性化した皮膚疾患に悩んでいる患者さんは、多いのではないかと思います。
後日談ですが、顔の湿疹がひどい頃、自分の顔がクシャクシャになる夢を見てうなされたことが何度もあったそうです。さぞかし辛い思いをされてきたことでしょう。
参考文献 金属アレルギーと歯科治療 吉川涼一著 現代書林
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