口は幸福の究極の概念
本日は、メデントインスティテュード代表の伊藤正夫先生の著書からお届けいたします。
口は幸福の究極の概念をつくる
そもそも口は、人の幸福感ときわめて密接な関係を持っています。
口の機能がうまく働かないと、人は幸せを感じられなくなります。これは人の発達段階の一番初期の体験と結びついています。
オーストリアに有名な心理学者ジークムント・フロイトは、性的発達段階のひとつとして、口唇期というものを提唱しています。これは、授乳期にあたりますが、人の性格を形成する上で強い影響をもたらす時期です。
赤ちゃんは生まれてから、お母さんの乳房に吸い付くことによってのみ、生きることが出来るわけです。お乳が唯一の生活の糧です。
そのため、乳房に吸い付くことは、生存に欠くことの出来ない行為なわけです。赤ちゃんはこれでしか生きていけないということを感覚で感じ取っているわけです。
ところで、赤ちゃんはお乳を吸うときに、私たちがストローで何かを吸い取るように吸っているわけではありません。まずお母さんの乳房を口いっぱいにほおばります。そして乳房を舌で口蓋(口の天井)にぎゅっと吸い付ける、いわゆる吸綴(きゅうてつ)行動を起こします。これはとても強い吸引力です。
この時、赤ちゃんはまだ歯が生えていませんから、顎の土手、唇、ほっぺたと、口の全部の機能をつかっています。こうした行動によってお乳が口の中に流れ込み、飲むことが出来ます。
赤ちゃんは(ということはつまり人は)この時の感覚を覚えているのです。こうして口のすべてを使ってお乳を吸い、自分は生きていることが出来るという感覚、幸福の原始的な概念が構築されるわけです。
ところで、大人には、様々な幸福の概念があります。「幸福とは」と聞かれてば、人によって答えが違います。
しかし、幸福というものの核は、生後3ヶ月の間に決まっているのです。基本概念は赤ちゃんの頭の中に形成されているのです。
つまり、お母さんのお乳を飲む幸福感です。これは口という器官を通じて、情報が赤ちゃんの頭に入っているわけです。これによって口が、人にとっては死ぬまで幸福と密接な関係を持つことになるのです。
たとえば、幸福の瞬間といえば、恋人同士のキスがあります。これはお互いの幸福の感覚、すなわち生まれて以来慣れ親しんだ口の接触感覚を交換するという行為です。
歳をとったら、食べることだけが楽しみという人が多くなりますが、お年寄りは腹一杯食べたいからうれしいわけではありません。味わいやのどごしを味わいたい、そこに幸福を感じるのです。
これも赤ちゃんの時に確立した幸福感の延長線上にあるのです。
この口の機能に障害を受けると、幸福を感じられなくなります。幸福感が遠のいてしまうのです。
歯科医に、「この歯は抜きましょう」と言われただけで、人は大変に寂しい気持ちを抱きますが、これはたった1本の歯にせよ、自分の幸福の一部をはぎ取られるような感じがするからです。
口は、心臓などと較べれば生命の維持そのものには大きな役割を果たすわけではありません。栄養を体内に入れるという点だけならば、いろいろな方法があります。
しかし、、口は人が生きる目的である「幸福」と非常に密接な関係を持っています。口は幸福を感ずることが出来る器官だということが重要なのです。
参考文献 高度歯科医療最前線 監修 伊藤正夫 経済界
口 は人間の 玄関 と思う、
食べる事 話す事 奥の深いところ、
大事にしたいところです。