親から子へ伝えていくもの
本日は、鶴見大学歯学部 斉藤一郎先生の新刊「現代病 ドライマウスを治す」からお届けいたします。
「噛みごたえ度」分類
日本人が1日の食事中に噛む回数は、戦前は1400回くらいで、現代は600回に激減したといわれます。
ちなみに弥生時代の人たちは、食事の内容から1日4000回も噛んでいたと推測されます。現代の食環境、軟らかい食べ物が中心となっていることを考えれば致し方ないでしょう。
それにしても、現代人は噛む回数が極端に減っていることは間違いありません。
また、1日のうちで食事にかける時間も昔は長かったのですが、現在は30分を切ったといわれています。
1日3食として、1回の食事に平均で10分もかけないというのが当たり前になってきたのです。
実際、朝食を5分で済ますという人も少なくありません。食事にかける時間が短くなったわけですから、咀嚼回数が減るのも当然なわけです。
言わずもがなですが、噛む行為は食事と密接に関係しています。食事は人間が生きる上で欠かすことの出来ないものですが、単に栄養のある食べ物を体の中に取り込めばそれでいいとうものではありません。
肝心なのは、食べ物を口の中に入れてもすぐに飲み干したりせずに、まずはしっかりと咀嚼すること、よく噛むことなのです。
何かと忙しい時代ですから、ゆっくり噛んで食べている時間はないという人もいるかもしれません。しかし、
「噛まない人ほどぼけやすい」
「噛まない人ほど老けやすい」
「噛まない人ほど病気になりやすい」
と言われても、平気でいられますか。ちょっとドキッとした人もいるのではないでしょうか。
「噛むというのはそんなに大事なことなのか?」
そういう疑問を抱く人もいると思いますが、答えは「イエス!」です。良く噛む人ほどぼけにくく、老けにくく、病気になりにくいのです。
子どもの頃に、親から「もっとしっかり噛んで噛みなさい」と注意されたことがある人も多いと思いますが、この言葉には「健康で元気に育って欲しい」という願いが込められていたはずです。よく噛むことが健康とどのような関係にあるかは、親自身も詳しく知っていたわけではないと思います。
しかし、古くから現在に至るまで親から子へと脈々と受け継がれてきた生活の知恵のようなものが、この言葉に集約されていると考えて良いでしょう。自分自身はもとより、子どもや孫も健康で長生き出来るように、いつまでも若さを保っていられるように、そして幸せに暮らしていけるように、「しっかり噛みなさい」と伝えて行くことが大切だと思うのです。
現代は、美食がもてはやされている時代です。美味しいものを食べること自体は悪いことだとは思いませんが、テレビや雑誌などを見ると、「とろけるようなおいしさ」「やわらかくておいしい」「ふんわり感がたまらない」といった、良く噛まなくてもすむものを高く評価するコメントが多いように思います。
反対に、しっかり噛まないと飲みくださないような食べ物は美食家には敬遠は美食家には敬遠される時代なのかもしれません。
こんな風潮に踊らされていると、健康も若さも、知らず知らずのうちに私たち日本人から遠ざかっていくような事にもなりかねかねません。
最近は、「栄養のあるものを」「新鮮なものを」「添加物の少ないもの」と食べ物に気をつかう主婦が多くなっています。家族の健康を考えて食べ物に注意を払うのは喜ばしいことですが、「なにを食べるか」だけでなく、「どのように食べるか」(つまり、しっかり噛んで食べること)にも注意を払って頂きたいと思っています。
参考文献 「現代病」ドライマウスを治す 斉藤一郎著 講談社
改めて,噛む事を学びました。
スローライフに務めます。