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2007年2月17日 (土)

ダメージの小さい治療2

昨日の続きで、河野先生の著書の中からご紹介いたしております。

昨日は、「歯科における侵襲」について多くの事を書きました。

侵襲だけでなく、「治療の深さ」も重要なポイント

長々と最小の侵襲について述べてきましたが、私は侵襲という言葉をあまり使いたくありません。

その理由は、もちろんこの言葉の字面からくるイメージが良くないこともあるのですが、重要なのは次の二点です。

一つは、歯科での処置を行う場合、必ずしも侵襲という言葉だけでは説明しきれない場合があるからです。

例えば、大臼歯に虫歯が出来た場合を考えてみましょう。

この治療には、虫歯の部分を最小限に削って充填する方法と、削った上からかぶせる方法があります。虫歯の部分を最小限に削って充填するほうが侵襲がすくないので、「最小の侵襲」を重視する場合、当然、前者を選択することになります。

ところが、この選択に問題が無いわけではありません。充填するとつなぎ目が見えて実例に見えない上に、そのつなぎ目から新たな菌の繁殖を招くことがあります。

また虫歯が深くて大きく削ると、歯が薄くなって欠けやすくなります。それならば、多少侵襲は大きくても、上からかぶせる治療の方がよい場合もあるのです。

このときに、「かぶせる治療の方が侵襲が大きい」と単純にいえるでしょうか。むしろ侵襲とい言葉より、「治療の深度が深い」というべきだと私は考えています。

この治療の深さは、侵襲やダメージと同じ意味ではありません。

つまり、治療が深ければ侵襲も大きいとは限らないのです。そして治療は深いものでありながら、侵襲が小さい場合も少なからずあるのです。

たとえばすでに虫歯があって深く削ってあるところに、あたらな虫歯が出来ても、すこし削るだけで済みます。こういう場合、治療は深くても侵襲は小さいといえるでしょう。逆に何も治療していない歯を削る場合、治療の度合いは浅くとも、侵襲自体は大きいという場合もあるのです。

このように治療を選択する場合、ただ侵襲だけを問題にするのではなく、治療の深さも合わせて考えなければなりません。

すなわち、すでに「深い」治療がなされている場合には「深い」治療を選びやすいけれど、逆に治療の度合いが「浅い」場合には、「深い」治療を選びにくくなります。

その場合、とりあえず浅い治療でどこまで治るかということをやってみなくてはいけないケースも出てきます。

もう一点は、歯科の場合、処置それぞれにあらかじめ侵襲の度合いが決まっているかのような印象があることです。たとえば、「矯正治療は歯を削らないで、侵襲が小さいを決めつけているようなケースです。

確かに矯正治療では、歯そのものに対しては矯正装置をつける以上の侵襲はありません。しかし、歯を動かす時は骨に対する侵襲が生じますし、また歯を並べるスペースが不足している場合には、あらかじめ歯を抜く事などを考えると、全体として侵襲が小さいとは言い切れません。

もともと侵襲は小さい方が良いに決まっているわけですから、侵襲が大きいと決めつけられてしまった処置法は選択される余地が無くなってしまいます。

このように、侵襲の度合いだけで考えると選択の幅が狭くなったり、適切な選択が出来なくなることが多々あるということです。そこで私は治療方法を選択するにあたって、「侵襲」だけでなく、「治療の深さ」も重要な指標として、併せて考えることにしています。

侵襲と深さの両方を考えることにより、患者さんご自身が治療法を選択する上でもよりわかりやすいと思います。

もちろん処置をする際に、歯や歯周組織にどの程度ダメージを与えるかということは非常に重要な問題で、このことについて患者さんに十分な説明をすることはいうまでもありません。

同時に、治療の深さの違いによって最終的な修復物の出来上がりに違いが出てくることも多く、これについても侵襲とは別に患者さんに十分理解していただく必要があります。

明日へ続きます。

参考文献 歯の審美治療入門 河野陽一著 夏目書房出版

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