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2006年10月17日 (火)

歯科と環境ホルモン1

最近は非常に少なくなったのですが、何年か前の“環境ホルモン”が社会問題された時は、多くの親御さんからご質問を受けました。

「先生、この歯科処置は“環境ホルモン”の影響は大丈夫ですか?」と。

あれから、だいぶ時間が経って、今はこの質問を聞くことはほとんど無くなりました。

それは、だいぶ情報が皆に伝わったか、又は皆の関心が薄くなったのか。

今回は何回かにわけてこの問題を取り上げます。

今回利用するテキストは『唾液は語る 山口昌樹・高井規安共著』です。

歯科業界ではここ数年、内分泌(ホルモン)を介する化学物質が人間や野生動物に及ぼす影響に感心が集まりつつあります。

この問題自体は決して目新しいものではなく、ある種の化学物質群によって動物の生殖系が破壊されたという事実は、過去40年にわたって記録されています。

ある化学物質が動物の個体数を減少させるという証拠もあり、人間でも生殖能力に変化が生じるのは、内分泌系に悪影響を与える化学物質にさらされているからではないかという疑いが濃くなってきました。

環境ホルモンは変装したホルモン

環境ホルモンは正式には「外因性内分泌攪乱化学物質」といいます。

本来、ホルモンは細胞や体の機能を正常に維持するのに欠くことの出来ないもので、体内の内分泌腺から分泌された後、血液やリンパによって運ばれて標的となる細胞の受容体(レセプター)と結合し、細胞の核に入り込んで遺伝子のさまざまな反応を誘導します。

たとえば、すい臓から出て、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンがその一例です。インスリンが欠如すれば、糖尿病になるのはご存じでしょう。

ところが、化学物質の中にはホルモンと同じような作用を持った物があり、正常なホルモンに「偽装」して受容体(レセプター)とくっつき、遺伝子の情報伝達を狂わせる事があります。

正常なホルモンの働きも阻害されるため、生体内に混乱を起こします。

環境ホルモンとはそうした作用を持つ化学物質の総称で、その多くは女性ホルモンのエストロゲンとよく似た働きをするのが特徴で、「エストロゲン様物質」と呼ばれています。

体を女子大生の部屋にたとえると、その部屋の持ち主の女性に変装した男が合い鍵を使って部屋に侵入し、部屋を荒らしてしまうといったものでしょうか。

ホルモンを「鍵」、受容体を「鍵穴」とすると、このホルモンに似た物質「環境ホルモン」が「偽の鍵」となって侵入してきます。

偽の鍵が使われると正しい鍵が使えなくなり、本来のホルモンの働きが狂わされてしまいます。

生態系にどんな種類の環境ホルモンがどれだけ存在し、その量がそのくらいになると生物や人間に危険なのかは、今のところはっきりしていません。

世界自然保護基金(WWF)によれば、65種類、日本化学物質・情報センターによると148種類が環境ホルモンであると認定されています。

欧米では、雄か雌かがはっきりしない魚が大量に発見されたり、雄ワニのペニスが縮小かして生息数が減ったという報告もあります。日本では、巻き貝の雌にペニスが出来るという生殖異常が各地で起こり、その原因は船底に塗る塗料に含まれていた有機スズでした。

また、東京湾で採れた雄のマコガレイが雌特有の卵黄タンパク質を作り続けていたという例が報告されています。欧米諸国では男性の精子数が減り続けているとう報告もあり、人体への影響が表面化しつつあります。

明日へ続きます。

参考文献 唾液は語る 山口昌樹 高井規安共著 工業調査会

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