どうしてうちの子だけむし歯に?~最近の考え方
本日は、田中英一先生他の著作である『お母さんの疑問に答える すこやかな口 元気な子ども~小児歯科医からのメッセージ』よりお届けいたします。
◇歯磨きしているのにむし歯になる!
診療室にいらっしゃるお母さん方のなかで、お子さんのむし歯が見つかると、「歯磨きしているのに、どうしてうちの子はむし歯になるのでしょう?」と方を落とされる方がいます。
家庭での生活の様子をよく聞いてみると、一日に朝晩2回はお子さん自身が歯が磨いているようです。それだけ聞いていると、ナルホド、お子さんの歯に関心をもって生活しているようです。
しかし、お母さんは、「うちの主人は歯が悪く、私も小さいころからむし歯で苦労しているので遺伝でしょうか?子どもがむし歯になっても、しょうがないとあきらめています」と言います。
実際に、遺伝的に歯の質が悪く、どうしてもむし歯になってしまいやすいという人はいますが、私が臨床に携わっている30年近くでそういう方に遭遇したのはごく希でした。
最近のお母さん方は、自分の経験を含めて、知識や情報をよくおもちです。がしかし、それらが本当に正しいことなのか、ここでよく考えてみましょう。
◇実は生活習慣病
平成17年の厚生労働省の歯科疾患実態調査によると、近年では乳歯の健全な歯の割合が増えてきており、全くむし歯のない乳幼児に割合も増えてきています。それには、いろいろな要因がありますが、一つは保護者たちの口腔保健に対する意識が高くなってきたことが上げられます。家庭でのケアやかかりつけの歯科医をもつことなど、大人を含めて、以前とはかなり違う状況です。
しかし、一方で、社会全体のIT化が進み、スピーディーで、コンビニエンスな生活様式が喜ばれ、ストレスの多い社会になっているのも事実です。そのなかで、日本人の生活は深夜化し、生理的な生活リズムに狂いが生じてきています。子ども達もその影響を受け、文部科学省、日本学校保健会の調査などでも「こどもたちの生活時間の大人化」に警鐘を鳴らしています。
子どもたちの健全な成長を考えると、とても心配な状況です。それに加えて、保護者が保護者の便利さを子どもに押しつけて、子ども達にとっては本来好ましくない生活習慣を余儀なくされていることが多々見受けられます。
たとえば外出時に、周りに迷惑をかけないよう、静かにしていてもらいたいがために、子どもの口にアメを放り込んだり、お菓子を箱ごと子どもに持たせて、自由に食べさせている、といったことなどです。
診療室にいらっしゃるお母さんた方に聞いてみると、「その時は、アメが“黙らせ薬”のように感じていた」と言っていました。
現代のように、予防歯科医学が進み、保護者たちの知識や意識も高まってきた中でのむし歯の原因は、普段の何気ないことのくり返し、つまり生活習慣から発生することが多いのです。
現に、厚生労働省では、歯肉炎、歯周病は「生活習慣病」としていますし、文部科学省では、歯肉炎、歯周病だけでなくむし歯も生活習慣病として子ども達に指導しています。
参考文献 お母さんの疑問に答える すこやかな口 元気な子ども~小児歯科医からのメッセージ 田中英一先生他著 医歯薬出版
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