ハワイのお大師さま
前回に引き続き、3回目です。今回も高野山大学教授 村上先生のお話です。
ハワイの御大師さま
1月の25日から1週間、ハワイ州の島々にある真言宗寺院を視察しました。2日目にはハワイ島キラウエラ火山を経由してナーレフ村の大師堂を訪ねました。
車から降り立ったとき、いきなり眼に飛び込んできたのは、大師堂の屋根が半分なくなっている光景でした。
お堂と言っても、40~50人は入れる大きさであり、側に少し小さな建物が付属しています。
私たちが来ることは連絡してあったので、すでに15、16名の日系二、三世の信者の方々が集まっておられました。
全てご高齢の方達であり、女性に交じって数名の男性がおられました。歓迎のレイを首に掛けていただき、堂の入り口に置かれた机に本堂の弘法大師像が祀られていました。般若心経を通読し供養した後で、破壊されたお堂についてお話を伺いました。
それによると、台風と地震によって屋根が落ちたので、寄付をいただき修理しようとしたが、シロアリなどの被害もあり、お堂を取り壊し、寄金を募って再建するしかないということでした。
この村に住む日系の人々にとって、大師堂の祀られている弘法大師の存在は、日系移民百年の歴史の中で、過酷な労働に耐えさせ、心の安らぎを与えてくれた唯一のよりどころで合ったのです。
しかし、雨水に汚された大師像は、側の建物に安置され、もはやご供養することが出来ない。信者の方々からこの大師像をしばらくホノムのお寺に遷してほしいと頼まれ、私たちは、大師像をもってホノムのお寺に向かうことにしました。
別れの挨拶を交わし、車に乗りながら、日系の人たちの人生をさせた大師信仰の力をひしひしと感じていました。それをあらためて思ったとき、突然、目頭が熱くなり、別れの言葉を飲み込みました。涙を見せまいと歯を食いしばり、ただ手だけを振っていました。
参考文献 3月15日発行 日歯広報ラインマーカーより
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